映画とかのおはなしブログ

映画、漫画、本、などの感想とかのやつ。  ツイッター@tenguotoko

映画感想 ジャック・ターナー『悪魔の夜(1957)』

1957年 イギリス、アメリカ 監督:ジャック・ターナー (アテネ・フランセ文化センター 特集「中原昌也への白紙委任状」で観賞)

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悪魔を崇拝するカルト宗教の教祖を批判した教授が怪死。共同研究者だった心理学者ホールデンは、怪しい教祖の追求を続ける。しかし、気づかぬうちに「3日後に死ぬ呪い」がかかっているという羊皮紙を受け取ってしまう。教祖は本当に黒魔術を使うとでもいうのか?

悪魔が出てくるのに、本当にいるのか分からない!

冒頭、何かから逃げようと夜の森の道路を車で飛ばす教授。そこに、闇の中に浮かぶ煙と炎の中から、悪魔が現れます。狼とムササビを足したような容貌で8メートルくらいの巨体。DVDジャケットにもいますが、見た目は怪獣。慌てた教授は運転を失敗。ぶつかった電柱につぶされ死亡してしまいます。

この映画が独特なのは、冒頭に怪獣のような悪魔をはっきりと登場させておきながら、唯一の目撃者が死んでしまい進行する点。観客は映画の最初に教授が悪魔に襲われた一部始終を見ていますが、他に目撃者はいない。主人公たち劇中の人物からは、怪死に近い交通事故として扱われます。

主人公のホールデンも、教祖から「3日後に死ぬ呪い」をかけられた後、体調が悪くなっていき、やはり森の中で一人でいるときに悪魔に追われます。映画のシーンとしては、あからさまに悪魔は出てきます。しかし、悪魔教の教祖が催眠術の使い手であることも分かってきます。つまり、ホールデンは催眠術にかけられて幻覚を見ているだけの可能性もある。今の目線で観るとチープな着ぐるみ的でもある「怪獣のような悪魔」が、あからさまに出てきて人が襲われるシーンがあるにもかかわらず、悪魔がいるのかいないのかが曖昧なのです。

 ホラーとサスペンスを揺れ動くバランスと、その先の恐怖

 映画全体の温度も独特のバランスです。悪魔や悪魔教や催眠術が登場するオカルトホラーですが、主人公たちは悪魔の存在を知らず、呪いの存在についても、悪魔教のインチキを暴こうとしている立場で懐疑的です。つまり、悪魔教の教祖が教授の怪死に関わっているのではないかと暴こうとする立場。ヒッチコック作品のような、犯人に襲われながらも追及していくようなサスペンス映画のスタイルとなっています。

この「地に足の着いたリアルなサスペンス映画的作風」により、「あからさまな悪魔」のようなオカルトが画面に登場したときの異常さが際立ち、現実が揺れ動く感じがします。特にラスト、列車へ教祖を追跡し悪魔登場からエンドまでの流れは、異常さと可笑しさとクールが混ざって凄かったです。

そのような、現実が揺れ動く感じ、「真実は誰にも分からないが確かに人は死んでいる」という不安、といった、この映画を観ていて生じる感情。これが、キリスト教圏の人が持っているという「悪魔に対する恐怖」なのかもしれません。

ちなみに、「受け取ったら3日後に死ぬ羊皮紙」を受け取ってしまい、謎を解こうと奮闘する感覚は、『リング(1998年、日本、監督:中田秀夫)』に遺伝子が継がれている感じがしました。

 

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映画感想 白石晃士監督の新作短編『恋のクレイジーロード』と同時上映作品

2018年 日本 監督:白石晃士 (アップリンク渋谷)

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新作『恋のクレイジーロード』をメインに複数の作品を同時上映するプログラム。

『超エドガーケイシー』(14分)『恋のクレイジーロード』本編(18分)『メイキング・オブ・クレイジーロード』(29分)の3作が固定。

4作目はいくつかのレア作品を日替わり上映。今回は未見だった『暴力人間(97)』に合わせて行きました。

エドガーケイシー

14分の短編フェイクドキュメンタリー。白石監督と二人の俳優さんが、俳優の金子鈴幸さん(金子修介監督のご子息とのこと!)の誕生会を開く。その中で、金子さんが突然妙な告白をはじめる・・・

舞台はダイニングルームのみ。白石監督の撮影するただのホームビデオのはずだったのが、数分のうちに信じられないスケールの話に展開していきます。

これは、白石監督が著書『フェイクドキュメンタリーの教科書(2016,誠文堂新光社)』付属DVD収録の短編作品『白石晃士の世界征服宣言』で披露したのと同じく、カメラひとつとアイデアと編集だけで面白いスペクタル映画が撮れるんだぞ!という意志を感じる作品。しかも今回はコメディです。上映時間は短いですが、これ1本目当てで観に行っても申し分ない面白い作品。今までの白石監督作品が好きな方は、短い中で得意技が濃縮されており、楽しめます!

恋のクレイジーロード

 今回のメイン作品となる新作短編。どこかの田舎道。バスに乗ってどこかへ向かっているカップルらしき男女。ふたりとも、どことなくやさぐれて病んでいる様子。窓からの景色もどことなく荒んで見えます。すると、同じバスに乗っていたヤンキーが因縁をつけてきます。このヤンキーがまた白石監督お得意の悪い奴。現実にいたら絶対関わりたくないイヤさ。しかし、そんなヤンキーなど問題にならない、本当にヤバイキチガイがバスに乗り込んできた!

「クレイジーロード」というとちょっとカッコイイですが、乗客も少ないバスの中で狂気(クレイジー)がどんどんインフレしていく展開は濃密!。上映時間は18分とのことですが、興奮で30分くらいに感じました。冒頭、主役カップルの女がバスの外に目撃してしまう「本当にヤバい何か」のショットはホラーとしても最高!

メイキング・オブ・クレイジーロード

『恋のクレイジーロード』のメイキング作品。フェイクではない純粋なドキュメンタリーで、白石監督ではなく別の方(たしか助監督? 訂正、別の方でした)の監督作品です。ニコニコチャンネル「白石晃士と坪井篤史の映画狂人ロード」の雑談で白石監督が俳優田中俊介さんに注目。その個性を発揮させるための企画が実現したという経緯。撮影の一部始終が丁寧に描かれます。撮影期間一日という限られた時間、路線バスの中というワンシチュエーションで試行錯誤する撮影風景は緊張感も伝わってきます。白石作品では常連の宇野祥平さんの素の姿も見所。通常、映画館の上映で本編とメイキングを連続で観ることはないので、珍しい映画体験になりました。

暴力人間

 1997年 日本 監督:白石晃士、笠井暁大

ひろしま映像展98で企画脚本賞・撮影賞を受賞した初期の自主映画長編。大学の映画サークルに所属し、何か凄い映画を撮りたい白石君。超体育会系で上級生・OBから地獄のイジメが行われるのが恒例だった新入生歓迎会で大暴れして退部になったという伝説のワルふたり。その密着取材ドキュメンタリー映画を撮ろうと、ふたりにインタビューを試みます。しかし、そのふたりのワルさは常軌を逸していた!

最初、学生がビデオをただ回してるだけだったのが、その辺の不良モノ顔負けの、信じられぬ「いともたやすく行われるえげつない行為」がカメラの前で巻き起こっていきます!

プロデビュー前の作品ですが、登場人物の手持ちカメラ視点だけのPOVフェイクドキュメンタリーであり、それを活かしたリアリティ、悪い奴の信じられないくらい悪いえげつなさや、何が何でもカメラを離さず映画を完成させようとする白石君の狂気など、その後の白石監督作品の持つ個性が既にあるバイオレンス映画でした。

『恋のクレイジーロード』のパンフレット

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フルカラー18P。主演芦那すみれ✖宇野祥平✖白石監督の対談と、主演田中俊介✖今作でプロデューサーを務めた名古屋の映画館「シネマスコーレ」副支配人 坪井篤史の対談の二つの対談がメイン。作品の企画書も掲載。通常、この公開規模の短編作品ではパンフレットは作られないのでありがたいです。

www.uplink.co.jp

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映画感想『処刑軍団ザップ(1970)』処刑軍団ザップが出てこない件

1970年  アメリカ 監督:デヴィッド・E・ダーストン

新宿シネマカリテの特集上映「カリコレ2018」で観賞。

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冒頭から問答無用の処刑軍団ザップが登場!しない

ダムの開発により住民が流出。人口40人くらいの過疎集落に事実上なってしまったアメリカの山奥の町。そこを通りかかったのは、荒野の7人ならぬ、ヒッピー8人。

奴らはなんちゃってサタニストで、LSDを常用。雑なサタンの儀式を山の中で全裸で行い、通りかかった女性には襲い掛かるという、ウェイ系が究極進化した、いかれた奴らです。そいつらの車がこの町で壊れ、滞在することに。さっそく空きホテルに入り込み、暴れまわる。大量繁殖していたネズミをつかまえて焼肉パーティーとしけこむ異常さ。

一方、町の住人サイドでは、町の娘が誰かに襲われたと騒ぎに。娘のおじいさんが、ガキどもに一言ガツンと言ってやる!と乗り込みますが、一撃で返り討ち。LSD漬けにされて命からがら逃げ帰ります。

あいつらにおじいちゃんの仕返しをしてやる!と意気込む少年は、狂犬病の犬から採取した体液を、ヒッピーたちの朝食に混ぜ込み、ぶっ殺そうと企てます。

このように、この映画の前半は、過疎化した街にやってきたサイテーな若者8人と、それに気づいた一家の、緊張感あるやり取りが描かれます。

タイトルにある、処刑軍団ザップは出てきません。

後半は斬新なパンデミックもの

少年の復讐が成功。狂犬病にかかり苦しむヒッピー達。しかし、LSD常用者だったからか、もともと凶悪だったのがさらに狂人化。ナイフや斧などの狂気を手にし、人に襲いかかる狂った殺人鬼となります。この狂犬病は感染力が非常に強く、ダムの作業員らにも次々と感染。後半は、いわゆるゾンビ映画に限りなく近くなります。

しかし、この作品の魅力は、感染者がゾンビではない点。狂犬病または恐水病とされる病気に重度に感染。感染者は理性を失い狂暴化。生肉と血を求め人を殺しますが、水を異様に怖がるようになります。動く死体ではないので、そのビジュアルは、口から泡を吹いて「ウウェ~」とうめき声をあげる頭がおかしな人。そして、水を怖がるという設定により、感染者に襲われて絶体絶命!というシーンでは、川に逃げ込んだり、ホースで水をかけてピンチから脱出します。人が狂う重度の病気という設定は意外にも、死体が動くゾンビ映画よりもリアリティがあります。ですが、その絵面は「水をかけられていやがるキチガイ」でしかありません。なんとも言えないヘンさが込み上げてきます。

ただのB級映画というわけではない

ヒッピーたちの度を越した乱暴な狼藉ぶりと、感染者の狂人描写、そしてとんがった電子音のBGMにより爆笑シーンが多数ある本作ですが、単なるバカ映画なだけではありません。ヒッピーたちが町に訪れ、町が徐々にざわついていく様子。そして少年の仕返しがパンデミックに至るまでの過程が丁寧に描かれています。

この映画は、1970年という公開された時期と、基本は屋外が舞台なのに地下室に逃げるというシーンがわざわざあることからも、最初のゾンビ映画ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)』から直接の影響を受けていると思われます。狂犬病パンデミックも、動く死体をもっとリアリティ重視にしようとした工夫にも感じます。田舎ホラーと、スプラッターホラーと、ゾンビ映画と、シュールでヘンな映画の魅力を兼ね備えた、かなり面白い映画です!

タイトルにある、処刑軍団ザップは最後まで出てこないぞ。

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映画感想『サランドラ(77)』ぼくのジョギリ・ショック

1977年 アメリカ 監督:ウェス・クレイヴン

新宿シネマカリテの特集上映「カリコレ2018」で観賞

ホラー/スプラッターの巨匠の作品がスクリーンで観られる!というだけで、予備知識無しで観賞。一部で有名な「ジョギリ・ショック」という謎の宣伝文句の存在自体は、樋口尚文『映画のキャッチコピー学 (映画秘宝セレクション) 』を読んで目にしていましたが、この映画のキャッチコピーだったとは覚えておらず、観賞後に調べていて思い出しました。

f:id:tenguotoko:20180728161634j:plain戦慄のジョギリ・ショック

前半はかなりいい雰囲気

キャンピングカーで荒野の長い道路を進むファミリー。アメリカ横断家族旅行の最中のようです。ボロボロのガソリンスタンドで給油しようとすると、ガソリンスタンドの老人から「ここから引き返した方がええぞ」みたいな忠告をうけます。田舎ジジイの言うことなんて無視して進むファミリー。しかし、いつまでも荒野。もしかして、道に迷って軍の立ち入り禁止区域に入ってないか?と言う疑惑。ファミリーでもめてるうちに、車が藪に突っ込んで立ち往生してしまいます。

この荒野の雰囲気がとてもいい。この作品、前半は明確な怪物や怪奇現象などは出てきません。ゴツゴツした岩や藪がどこまでも広がる荒野で、じわじわと広がる不穏さ。まるで荒野そのものが意志を持ってファミリーを監視しているかのような、何も起きていないのにイヤ~な感じが濃くなっていきます。漫画『ジョジョの奇妙な冒険』では、新手のスタンド使いに攻撃される前に素晴しく不穏な雰囲気になる場面が多々ありますが、それくらい良い「不穏さ」。一体、どのような恐ろしい展開が待ち受けているのでしょうか・・・!?

 後半の落差がスゴイ

と、膨らんだ期待はすぐに弾け飛びます。まるで荒野から監視されているような不穏さ。その正体は、「物陰から男がのぞき見してた」だけだった!

f:id:tenguotoko:20180728163047j:plainこの人たちです。

この作品、分類するなら一応「田舎ホラー」というジャンルになります。荒野で立ち往生したファミリーは、この後、荒野に潜む野蛮な一家に襲われ、命を落としていきます。車で気軽に通りかかった田舎で、キチガイ一家に襲われるという話。プロットだけなら『悪魔のいけにえ(74)』そのもので、1977年という公開年を考えても『悪魔のいけにえ』みたいな恐ろしい映画を目指したのでしょう。

しかし、この『サランドラ』。「田舎ホラー」のさじ加減を間違えてしまいました。もはやホラー映画とは違う、「残酷ではあるけど、なんかヘンな映画」という味わいになっていきます。

ファミリーに襲い掛かる、恐怖のキチガイ一家。彼らを、レザーフェイス一家とも違う、新たな恐ろしいキチガイとして描写しようと工夫したのでしょう。だが、怖いかどうかというと、怖くない。むしろオモシロイ。

見た目はマッドマックス世界の人にも見える彼らは、荒野にテントを張って暮らしている部族。たまに荒野に迷い込む人を襲って生活しているようです。つまり、単なる「山賊」です。振る舞いはキチガイというよりも「義務教育を受けられなかったバカ」のよう。そして残念ながら、見た目はいかついですが、殺人鬼としての強さも、人並みなんです。こういう作品にネタバレも何もないので書きますが、こいつら、「ペットの犬より弱い」ぞ!

前半の素晴らしい不穏さは消し去り、普通に山賊が正面から何回か襲ってくるだけのヘンなお話となります。特に終盤、ファミリーの生き残りのいる場所へ、二人の山賊が一生懸命走っていくシーンが2分くらい続くのはサイコーです! あと、TUTAYAで『サランドラ2』借りてきました!

ポスターにあるジョギリ・ショックのシーンはない。



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映画感想『クレイジー・フォー・マウンテン』神秘体験に近づく瞑想トリップ映画

2017年 オーストラリア 監督:ジェニファー・ピードン (新宿武蔵野館で観賞)

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クレイジーというかマウンテン

原題は「Mountain」。邦題にクレイジーが追加されているのは、明らかに人気バラエティ番組『クレイジージャーニー』の影響です。確かに、この作品では、『クレイジージャーニー』でも取り扱っている、死と隣り合わせの登山やエクストリームスポーツも取り扱っています。たしかに、邦題を映画『山』! などにされるよりも、内容を想像しやすい邦題です。

しかし、この作品は、『クレイジージャーニー』のように、ひとりひとりの冒険家や挑戦者とその偉業にスポットを当てたようなドキュメンタリーではありません。扱っているテーマは「人と山との(一方的な)関係」です。

最初は普通のドキュメンタリーだったはずが

冒頭、何の説明もなく挿入される「命綱なしで数百メートルの絶壁を登る男」だけで、心が持っていかれそうになります。『バキ』でいうところのリアルシコルスキー、もしくはリアル「アイカツ!アイカツ!」です。

f:id:tenguotoko:20180726154640j:plain板垣恵介先生『バキ』シコルスキーさん

f:id:tenguotoko:20180726154948j:plainアニメ『アイカツ!星宮いちごさん

 ですが、序盤は誠実な普通のドキュメンタリーです。圧倒的に巨大な山脈に対し、人類は宗教的に「崇拝」していました。それが、人口の増加と科学技術の発展にともない、次第に「探検」「開拓」の対象になっていき、地図や登山ルートが徐々に作られていきます。地図が完成し、ルートが共有され、登山に使える道具や知識が発展していくにつれ、未登頂の山に挑戦するという「冒険」の対象となっていきます。その「崇拝」から「冒険」への移り変わりを、丁寧に解説してくれます。

後半のエクストリームコンボにめまい

 その「冒険」も、次第に普遍的なものになっていきます。世界最高峰のエベレストですら車道が整備され、世界中からツアー観光客の行列が順番待ち。もはや「冒険」も「観光」になってしまいます。ただ登るだけでは当たり前になってしまった現代で、刺激を求め続けた人々が辿り着いた要求は何か?。それが死の危険と隣り合わせの「エクストリームスポーツ」です。

氷の天井を命綱とピッケルだけで進む!命綱なして崖をよじ登る!ヘリコプターで山頂に行き自転車で駆け落ちる!わざと雪崩を起こし、そこにスノーボードで乗る!ムササビスーツで崖から飛び降りる!そういった、いつ死んでもおかしくないエクストリーム映像が、『クレイジージャーニー』放送20回分を同時に観るくらいの密度で怒涛のフラッシュバック!。全編流れている雄大クラシック音楽とのシンクロもあいまって、挑戦者たちの脳と自分の頭が同調をはじめ、時間の感覚が無くなっていき、脳内麻薬が出まくります!。自分は登山経験はほぼありませんが、もしかして、これが「山に魅せられた人々」の心境なのでしょうか!?

これに近い感覚/心境は、アクション映画の奇作『X-ミッション(2015年 アメリカ 監督:エリクソン・コア)』での数回のエクストリーム・ミッションシーンでも垣間見れました。しかし、あくまでも数回の見せ場シーンだけでした。こちらの『クレイジー・フォー・マウンテン』には、それしかありません!

映画『X-ミッション』公式サイト 2016年2月20日(土) 新宿ピカデリー、丸ノ内ピカデリー他 全国ロードショー<2D/3D上映>

まさにこの瞑想トリップのような「体験」が、映画『クレイジー・フォー・マウンテン』の醍醐味です。スクリーンでなければ味わえない映画体験。ぜひ、映画館で観てください!

『クレイジー・フォー・マウンテン』のパンフレット

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20ページフルカラー。監督と脚本家のしっかりしたインタビュー掲載。音楽へのこだわりも語られています。登場する17の主な山の紹介。服部文祥さん(登山家・作家)と、後藤陽一さん(フリーライドスポーツの主催者)によるコラムも掲載。単館系上映作品とは思えぬしっかりしたパンフレットです。

映画『クレイジー・フォー・マウンテン』公式HP|7/21(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

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【映画感想】『インサイド』 あれ?ホラーじゃない!?

2018年 スペイン・アメリカ合作 監督:ミゲル・アンヘル・ビバス (ヒューマントラストシネマ渋谷で観賞)

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観賞を即決した予告編

映画館でこの予告を見た瞬間に観賞を決めました

www.youtube.com

耳の聞こえない女性が、謎の女に襲われる!。この予告を見る限り、「金持ち屋敷に侵入した泥棒達が、盲目の老人殺人鬼に返り討ちに合う」というホラー/スリラーの名作『ドント・ブリーズ(2016)』の状況を、より困難にしたような同ジャンル映画だ!。と思ったからです。

ホラー映画じゃない!?じゃあ何なのか。

しかし、ホラー映画しか観たくない方は注意が必要です。この映画、ハナからホラー映画として作られていません。

なぜホラー映画ではないか?。この映画のモンスター「謎の女」。確かに素性は全く分からない謎の女です。ですが、映画の前半で思いっきり姿を見せ、主人公への殺意も見せる。そこで分かるのは、「謎の女」は、異常に執着した殺意と行動力はあるものの、普通の人。単なる「知らない人」なのです。怖いは怖いですが、恐怖の存在というよりも、サスペンスドラマの犯人くらいの脅威度です。

「謎の女」は、主人公の自宅に現れグイグイ襲ってきます。しかし、主人公は一人暮らしで難聴という困難な状況の中、なんとか逃れ続けます。

この作品を大まかなジャンルとして分類するなら、ホラーではなくスリラー映画です。ですが、娯楽として突き抜けたスリラーというわけでもありません。「謎の女」に超人的な力があるわけでもない。襲われる場所も自宅なので、建物の異常な構造や罠、秘密などもありません。普通の人が普通の人を殺そうとしてギリギリ殺せないという、少しもどかしいスリラーになっています。

だが後味の悪さがある

この映画の本質は、最初に提示されるメッセージの一文と、それを忘れたころに提示される後半の展開にあります。主人公の女性の「交通事故により夫を亡くし難聴になってしまった妊婦」という設定は、スリラー度を面白くするための設定では無かったのです。この映画の本当のジャンルは「厭な映画」。単純に面白いホラーやスリラーを期待してた観客にイヤ~な気持ちを植え付ける、「スリラーのフリをした厭な映画」。です。ぜひ映画館で軽い気持ちで観てください!

インサイド』のパンフレット

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 フルカラー24ページ。表紙の奥に女の顔が覗く面白いデザイン。解説や監督インタビューの他、平山夢明さん(作家)による「妊婦ホラー」への提言。鷲頭義明さん(映画文筆家)による、リメイク元『屋敷女(07)』との比較。高橋論治さん(映画ライター)によるスペインのジャンル映画についてのコラムなど掲載。この公開規模の映画としては、結構ちゃんとしたパンフレットです。

映画『インサイド』オフィシャルサイト 7.13(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開

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【映画感想】ホラー映画はサイコキネシス攻撃やっちゃダメ!

この記事は、映画『ウインチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』のネタバレを含みます。ネタバレ無しの感想はこちら 

【映画感想】『ウインチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』怖いの苦手な人こそ一番楽しめる、いいライトホラー - 映画とかのおはなしブログ

f:id:tenguotoko:20180716162554j:plain大友克洋先生『童夢』のひとコマ

怖くないホラー映画

ウインチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』という作品。上記感想に書いた通り、良い部分もある幽霊屋敷映画でした。細かい怖がらせジャブも悪くはないですし、最大の怨念を持った亡霊が、その正体を現すまでのシークエンスはなかなかゾクゾクしました。しかし、ホラーファンとしては、特に終盤の、そいつが出てきてからの怖さの減退が、かなり残念でした。

なぜ怖くないか?

ホラー映画において、幽霊が起こす怪奇現象ワザにはいくつか種類があります。「誰もいないはずの場所にいつの間にかいる攻撃」、ほん呪でもおなじみ「鏡や監視カメラにだけ白い影が映ってるアピール攻撃」などの小ワザから、ホラーじゃないジャンルの作品にも頻出する「普通の人とお話してたと思ったら既に故人だったことが後から分かる攻撃」といった変化球。VSもした有名な幽霊らがやる「憑りつかれたら数日後に絶対死ぬ攻撃」「家に入った人を即殺す」などのハードなワザまで、色々ありますが、この中でやってはいけないのが「サイコキネシス攻撃」です!

f:id:tenguotoko:20180716162554j:plain大友克洋先生『童夢』のひとコマ

全ホラー映画サイコキネシス攻撃禁止令

ホラー描写に失敗している心霊ホラー映画の中で、「サイコキネシス攻撃」がついつい出てきてしまう気持ちは、分かります。もともと古典的な心霊現象として、原因不明の音がする「ラップ音」とともに、誰も触れていない物体が動く「ポルターガイスト現象」があります。それを一体の幽霊の特殊能力と解釈してしまった場合に「サイコキネシス攻撃」を行わせてしまうのです。

しかし、です。映画の中で悪霊をドーン!と登場させ、悪霊が手を前にかざす、もしくは雄たけびをあげ、サイコキネシスで人間達が壁に吹っ飛ばされる!。「ぐはぁっ!」大ピンチ!。それって、怖いんでしょうか?。その悪霊は、もはや恐怖の対象ではなく、アベンジャーズX-MENのようなヒーローが戦うヴィランに、もしくは、ファンタジー世界で冒険者たちが戦うべきモンスターのような存在になってしまいます。それはただの「敵キャラ」でしかなく、怖くありません。

f:id:tenguotoko:20180716162554j:plain大友克洋先生『童夢』のひとコマ

全てのホラー映画は一刻も早く「サイコキネシス攻撃」を禁止してください。

良いポルターガイスト

 ポルターガイスト現象そのものがダメなわけではありません。最近のホラー映画の中では『死霊館 エンフィールド事件(2016年  アメリカ 監督:ジェームズ・ワン)』や『パーソナル・ショッパー(2016年 フランス 監督:オリビエ・アサイヤス)』などの作品が、ポルターガイスト現象をそれぞれ巧妙に活かした演出を行っていました。オススメの心霊ホラーです。

映画 『死霊館 エンフィールド事件』 公式サイト

映画『パーソナル・ショッパー』クリステン・スチュワート主演の心理ミステリー、シャネルやカルティエ協力 - ファッションプレス

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