映画とかのおはなしブログ

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映画感想『MEG ザ・モンスター』今までなかった「誠実なエンタメサメ映画大作」

2018年 アメリカ 監督:ジョン・タートルトーブ (TJOY品川 / IMAX3Dで観賞)

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サメ映画には、まともな作品が『ジョーズ(1975)』と『ディープ・ブルー(1999)』しか存在しないと永らく言われていました。しかしここ最近は、沖の岩場に取り残された女性がサメに追いつめられる名作サバイバル映画『ロスト・バケーション(2016)』と、海中でサメ観賞の檻に閉じ込められる名作スリラー『海底47m(2017)』があり、2年連続で名作サメ映画が公開されている嬉しいサメ状況。3年目も嬉しい作品が来ました!

バカ映画ではなく、正統派エンタメ映画

新たに発見された、人類未達の深海を探索している調査チーム。しかし、調査がきっかけで、古代に絶滅したとされていた超巨大サメ「メガロドン」が出てきてしまった! 

 サメ映画では、予算などいろいろな都合でサメがなかなか出てこないことが良くあります。しかし、この『MEG ザ・モンスター』は違います。サメの出し惜しみをせず、序盤からメガロドンが登場。ガンガン人類に襲い掛かり、ガチンコ大暴れしてくれます。このメガロドンのモンスターぶりが凄い。その巨体は30メートル以上もあると思われ、大きなクジラですら、ただのエサ! ひと口で食べてしまいます。その巨大さと暴れっぷりは、通常のモンスターパニックの枠を超え、怪獣映画に足を踏み入れかけています。

海上基地を拠点としている探査チームは、このメガロドンを研究のために何とか捕獲しようとします。しかし、メガロドンの脅威は、調査チームが想定している以上のものだった!。ちょっと捕まえるのは無理なんじゃないかな~?と思えるメガロドンを、なんとか捕えようと命がけで奮闘するチーム(主にステイサム)にハラハラが止まりません。

序盤から登場しっぱなしのメガロドン。そろそろ来るか来るかー?と、嫌な予感がすると、だいたい出てきます。なのにこの映画、意外に展開が読めない。「この人今から死ぬか?」と思った人が死ななかったり「お、ここで終わるか?」と思ったらまだまだ続く瞬間が何度かありました。

ビデオスルー作品にはZ級サメ映画が無数ありますが、それらは『13日の金曜日』の延長線上的なBスラッシャー映画の遺伝子も多く受け継いでいるバカ映画です。その影響から、今では我々の意識に「サメ映画=バカ映画」という刷り込みが(観てなくても)なされていますが、『MEG ザ・モンスター』は、バカ映画ではありません。冒頭でビキニギャルが襲われたり、サメの頭が増えたり、サメが空を飛んだりはしません。あくまでも、生物の範疇にある超巨大サメの脅威と人間(主にジェイソン・ステイサム)との対決を真正面から描いた、ハラハラ手に汗にぎるエンターテイメント作品。真面目で誠実な娯楽大作映画です。

2018年の作品では、ロック様と巨大ゴリラの『ランペイジ 巨獣大乱闘』も面白かったですね。その前にやってたサミュエル・L・ジャクソンと巨大ゴリラがにらみ合う映画もとても面白かったです。まだゴリラ率が高いですが、このまま「スター俳優とモンスターが対決する大作映画」路線が増えていってほしいと心から思います。リーアム・ニーソンVS巨大ヘビとか、トム・クルーズVS巨大猪とか、福山雅治VS巨大ザリガニとか、あと、「XミッションVS巨大コンドル」とか、自分でも何を書いてるのかよくわかりませんが、何でもいいからどんどんやってほしいですね。

 IMAX3Dがおすすめ

この作品、選択できるのならIMAX3Dで観た方がより楽しめます。大スクリーンで観ることにより、ほぼ実物大の大きさのメガロドンを目の当たりにできる迫力は何物にも替えられません。映画の舞台となるのはほぼ海中と海上のみですが、3Dになることによって、先の見えないほど無限に続く海の深さの恐怖と、広がる洋上に孤立して逃げ場のない状況が強調されます。また、今作では付近にいるメガロドンが接近してくるといった、距離によるサスペンスシーンが多数。3Dで本当に距離感を感じられると、緊張感・迫力が増します! 

ぜひ、IMAX3Dで観てください。少なくとも、DVDまで待つのではなく映画館で観てください!

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映画『MEG ザ・モンスター』公式サイト

 

 

2017年映画感想ツイートまとめ その3(5月6月分およそ48本)

前回 2017年映画感想ツイートまとめその2(3月4月分およそ36本分) - 映画とかのおはなしブログ

元は「〇〇なう」形式なので整理。当時の感情こそが貴重なので、今の意見は足さず、当時のまま残す。観た作品全部の感想を書いているわけではない。()は観賞した映画館orメディア。角川シネマ有楽町エリック・ロメール特集に通いまくっていた時期。年間ベスト級の新作も複数公開された忙しい時期でした。

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『裏窓』1954年 アメリカ 監督: アルフレッド・ヒッチコック (楽天地シネマズ錦糸町 / 午前10時の映画祭)

完全初見。車椅子の写真家が、窓から向かいアパートの住人達を何気なく覗き見してるうちに、奇妙な違和感に気づいてく。心の3D映画とでもいうような、劇場スクリーンが窓と一体化する超臨場感!オールタイムベスト10級に心底面白かった!

無限の住人』 日本 監督:三池崇史 (名古屋ミッドランドスクエア)

スプラッターチャンバラ」のみにリソース集中させたプログラムピクチャー。血まみれ泥まみれの斬り合いか続きすぎて、観客だけでなく、登場人物達自身も自分が何をしようとしていたのか分かんなくなるくらいずっと、残酷チャンバラだけの映画だぞ。

『食べられる男』2016年 日本 監督:近藤啓介 (新宿K'sシネマ)

人類の為に侵略宇宙人に食べられる係に決まった男の7日間。ところがその状況になる前から、暗い終わってる境遇だったことが次第に見えてくる。つらすぎて笑えてしまう社会風刺コメディ。つらくて胃が痛くなるので注意…

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 『お嬢さん』2016年 韓国 監督:パク・チャヌク (ユジク阿佐ヶ谷)

お嬢様の財産乗っ取りを目的で侍女として潜入した女。だが次第に情が移ってしまう。そこまでは普通だが、そこからさらに本音と、嘘と、変態的真実の逆転・暴露が続き翻弄される。連続テレビ小説を欲望むき出しにしたような映画。

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アンタッチャブル』 1987年 アメリカ 監督:ブライアン・デ・パルマ (楽天地シネマズ 錦糸町 / 午前十時の映画祭)

街全体を支配するギャングに、はぐれ者捜査官が立ち上がる。面白かったが、傑作と聞いて期待しすぎた。敵が子供も殺すような集団なのに、主人公側が油断しすぎている。夜に自宅で一人で酒飲むとか、銃持った奴によそ見するとか、、

時をかける少女【再タイミング版】』1983年 日本 監督:大林宜彦 (東京国立近代美術館フィルムセンター / よみがえるフィルムと技術 特集)

劇場観賞は初。誰かの心の中のような色彩。冒頭から既に夢の中のよう。TV画面で観た時よりも怖く、孤独と死の恐ろしさを感じた。

スパルタンX1984年  香港 監督:サモ・ハン・キンポー (新宿武蔵野館)

予備知識ほとんど無し、ファミコンソフトあったなくらいの認識で観賞。過剰過ぎるズッコケギャグを振り撒き続けながらの超アクションが愉快なカンフー映画。なのに綺麗なスペインの町が舞台なので、自分は一体今何を見てるのだ?、というかつてない気持ちになった。

『スプリット』 アメリカ 監督:M・ナイト・シャマラン (T・ジョイ品川)

多重人格の異常者に捕まる監禁映画。役者の台詞や表情が思わせぶりで、どんでん返しへの想像が膨らむ良い映画。だが、どんでん返しは、その想像とは別方向から来る。1行でネタバレ可能なので皆明日すぐ観た方がいい。

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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2【IMAX 3D】』 アメリカ 監督:ジェームズ・ガン (T・ジョイ品川)

続編として普通に面白い。宇宙ギャグの繰り返しの中で、誰も正義ではないこと/個々の価値観が全く違うこと/それでもなんとか協力していくこと/が強調される。宇宙的ヒューマンコメディアクション。

 『かたびら街』2003年 日本 監督:相澤虎之助 (UPLINK渋谷)

過去に暴走族としていわせてた奴らが、普通に働き出してしばらく経ってからを描く中編。地方の普通の人々が労働と貧困で擦り減っていく様はこの後のサーガでも描かれるが、今となっては地方だけでなく日本全土に広がっているように思える。

『Furusato2009』2010年 日本 監督:富田克也   (UPLINK渋谷)

地方の人々を取材した中編ドキュメント映画だが、劇映画だった『国道20号線(06)』で描かれた地方の完全な延長。外国人労働者が自国に帰れない事情や、土木現場の取材で大事故の話が普通に出るなど、NHKで全国に放送してほしい位の内容。

ジェーン・ドウの解剖』2016年 イギリス 監督:アンドレ・ウーブレダル (新宿シネマカリテ)

惨殺事件現場の地下で見つかった、地面に埋まった謎の綺麗な死体。検死官と息子が解剖していくうちに、腑に落ちない点が次々出てくる。どんでん返しが連続するわけではなく、結構正統派のホラー映画。予告も何も調べずに「解剖する怖い映画」位のつもりで気軽に観るのが楽しい。

『メッセージ』 2016年 アメリカ 監督:ドゥニ・ビルヌーブ (TOHOシネマズ六本木)

地球の12箇所に謎の物体。意思疎通不可能な異星人との交流に言語学者が駆り出される。終わっていく世界に、知性と黄金の精神で対抗する「ザ・SF映画」。異星人と交流するための「窓」が出てくるが、スクリーンが心の中でその窓と一体化する。

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『サウダーヂ』2011年 日本 監督: 富田克也 (渋谷UPLINK)

滅んだアーケード。土着する外国人労働者。裏ではびこる怪しいビジネスや政治家。甲府の土方男とHIPHOP青年が直面する壁。地方都市から見える日本の様々な意味での貧困と、その先の凄いドラマ。

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 『夜明け告げるルーのうた』 日本 監督:湯浅政明 (T・ジョイ品川)

類型的ET系物語だが、話はもっと悪い意味で破綻。しかし、ヘンな展開に突き進むテンポと超アニメーション、そして、時折のすんばらしいショットで妙な気持ちになる、バランスの狂ったアニメ映画。

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』2015年 イタリア 監督:ガブリエーレ・マイネッティ (新宿武蔵野館)

超パワーを得た男が謎のスーパー強盗として有名になる。偶然助けた心の壊れた女は、アニメ「鋼鉄ジーグ」のDVDだけが心のより所だった。ノワールから愛のヒーロー映画に揺れ動く名作。そして、この作品の存在そのものが感動的な素晴しい映画。

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『美しい星』 日本 監督:𠮷田大八 (TOHOシネマズ新宿)

個々に不安を抱える4人家族。その3人が、別個に宇宙人と接近遭遇し覚醒。展開が読めず、宇宙人なのか、ただの狂人なのかをはじめ、真実と幻想の境目が分からなくなる。多くの人に観てほしい、世にも奇妙なガチSF映画。感触は「世にも奇妙な物語を凄くしたやつ」や「ウルトラセブンのいないウルトラセブン」。事態がおかしな方向に転がっていき先が読めない感じもたまらない。ジャンルとしてはSF映画だが、ホラー好き昭和特撮好きサスペンス好きな人にも試しに観てほしい。リリーさんは近年のどの映画も凄いけど、今作の「マジで火星人に覚醒したのか、ただの電波なのか分からん気象予報士父さん」役も素晴らしい。橋本愛さんも「呪われた最高の美人」とでもいうような今の橋本愛にしかできない役。破壊力MAXで完全に代表作1本追加という感じ。

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パーソナル・ショッパー』2016年 フランス 監督:オリビエ・アサイヤス (TOHOシネマズ六本木)

パリ・ロンドンのファッション界隈でセレブ買物代行をつとめる女性が、謎の事件に巻き込まれるミステリー。…を装った上質の心霊映画! 直接の刺激的な場面は少ないのに、考え込むほどに怖く不安になる作品。おしゃれ映画に見せかけて、予想以上にサイコ/心霊ホラー映画。ジャンル映画のホラーとして興行すると絶対観に来ない種類の人々に、気づかれぬようにホラー映画を見せつけたいという狙いがあるのではないかとすら思った。ホラー映画全部観るマンの皆さんも上映終わる前にぜひ観に行ってください!『パーソナル・ショッパー』は『ダゲレオタイプの女(2016)』は、アサイヤス監督と黒沢清監督がメル友で二人して仕掛けたのではという程シンクロしてた。『降霊(1999)』の幽霊演出を引用した場面あったので、「黒沢清をオマージュした仏映画」と「黒沢清が監督した仏映画」の奇跡ということかな。

 『駅馬車』 1939年 アメリカ 監督:ジョン・フォード (飯田橋ギンレイホール)

完全初見。馬車に乗り合わせたクセのある人々の思惑入り交じりながら目的地に進む展開と、馬車がアパッチ族に襲撃されながらの疾走感ある戦いは、今の視点で見るとマッドマックス怒りのデスロードや富野アニメのご先祖様そのものに感じた。

『黄金狂時代』1925年 アメリカ 監督:チャールズ・チャップリン (飯田橋ギンレイホール)

完全初見。現在の漫画誕生以前の作品なのに、「まんがみたいな」という言い方がしっくりくるような超絶ドタバタコメディ。どうやって撮影してるのかわからん場面が多々ある! しかし、雪山/一攫千金/遭難サバイバル/熊 って、レヴェナント!?

 『夏物語』1996年 フランス  監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

リゾート地に来た男の子が、3人の女の子に振り回されたり振り回したりし続ける夏休み。少年サンデーみたいなラブコメ青春を、上質の映画のルックで堪能。メインヒロインのアマンダ・ラングレが、超絶可愛いすら通り越した形容できない輝き。

『恋の秋』1998年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

夫を亡くしたまま彼氏もいない女を心配して、友人は出会い系広告を勝手に出し(!)、息子の彼女は自分に言い寄る高校時代の担任をくっつけようとする。二つの別々の無茶が合流。人物それぞれの様々な「好き」の関係が見えてきて可笑しいラブコメ

冬物語』1991年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

超タイプな運命のハンサムと恋に落ちた女だが、天然ボケが凄まじく、連絡先を間違えて伝え離れ離れのままシングルマザーになる。二人のおじさんとつき合ってみるが、やっぱ無理で目が死んでる。筋書きだけなら奇跡の再開感動恋愛モノなのに、嫌さのパワーが凄い映画。

『モンソーのパン屋の女の子』1963年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

冴えないイイ男がすれ違う女をナンパしたが会えなくなる。もう一度出会うために街をうろうろしてるうちに、パン屋の店員さんを好きになっていく、という短編。既に「他者の期待の為でなく自己の為の恋愛」を貫く登場人物が確立してる。

『シュザンヌの生き方』1963年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

冴えない大学生がクズ男と親友になった気でつるむ。クズ男に遊ばれてる可愛い女の子に次第に懐かれるが…。「男2人女1人の少しワルい恋愛モノ」という当時大流行のジャンル映画として作られたのだろうが、中身はかなり痛いNTR

『O公爵夫人』1975年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

貴族の未亡人娘が妊娠。原因が藪の中で一家が大騒ぎ。登場人物達にとってはただ事ではない事態だが、観客には真相は分かるので、当時の貴族的価値観によるずれた慌てぶりとボタンの掛け違いがコメディに見える。絵画がそのまま動いているように綺麗。この『O公爵夫人(75)』と、キューブリックバリー・リンドン(75)』。どちらも小説が原作で、「近世ヨーロッパ貴族たちの真面目な行動を淡々と描写すると、現代の観客視点からはコメディに見える」映画、という同じジャンルの映画な気がする。同じ年に類似作が同時多発的に現れる現象なのかな?

 『劇場版 屍囚獄 起ノ篇』 日本 監督:城定秀夫 (シネマート新宿)

携帯通じぬ山奥の村には、ヤバい風習が残っていた! 低予算セクシーホラー×定番怪談という組み合わせながら、生真面目に作られた佳作。前編で結構話が進んでいて、後編でどう転がるか分からん。

『聖杯伝説』1978年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

全編書き割りセットで展開する騎士物語。超無垢な与太郎が、ドンキホーテわらしべ長者が混ざったような旅を続けるコメディ。と思ってたら後半で話が2度ぶっ飛ぶヘンな映画。ロメールが「エル・トポ(1970)」に対抗したかのようなカルト映画とも見えた。

ウルヴァリン: SAMURAI』2013年 アメリカ 監督:ジェームズ・マンゴールド (Amazonビデオ)

ウルヴァリンが、美化された芝公園とか、秋葉原高田馬場っぽい町とか、上野駅とか田舎の海辺の町とか、日本の色んな場所にいるというだけで楽しい。高速バスで長崎に行くのもサイコー!

『五日物語-3つの王国と3人の女』 2015年 イタリア・フランス合作 監督:マッテオ・ガローネ (早稲田松竹)

ヨーロッパ最初の昔話集の映画化。女の欲望をモチーフにした残酷昔話3篇がすれ違いつつ、小粒の挿話も見え隠れしながら進む。脈絡の分からん展開もあり、夢を見た直後のような妙な気持ちが残った。

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ネオン・デーモン』2016年 フランス・アメリカ・デンマーク合作 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン (早稲田松竹)

劇場観賞2回目。1回目より理解が進んだ。夢を叶えるために一身都会に出た女の子の不安を描く精神的なホラーが、別のホラーに展開する。今回は、サスペリア等の延長線上のような王道少女ホラー映画として大いに楽しんだ。『ラ・ラ・ランド』裏バージョン的な要素があることも確認できた。

早稲田松竹の今回の『五日物語-3つの王国と3人の女』『ネオン・デーモン』の併営。どちらも、女が別の女の若さ美しさを求めて残酷なことになる、という映画なんですね。

春のソナタ』 1989年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

家に帰れぬ女教師が女の子と仲良くなる。女の子の父親の今の恋人は女の子と不仲。4人が理屈っぽい議論をめちゃ続けるうちに、家にいられる/いられないことと、好きの度合の関係が変化してく。すごい喋る映画なので字幕を追いきれなくなった(笑

『密航0ライン』1960年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

二人のライバル新聞記者が、麻薬売買事件から密航ルートを探る。片方の男が記者の取材レベルではないハードボイルド刑事のような行動力。裏取引・恐喝で悪人も利用し手段を選ばない。60年前の東京の街並みも興味深く当時の活気と闇が味わえた。

『満月の夜』1984年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

愛と友情と自由について独特の価値観を持っているかのように見えた素敵な女と、周囲の人々のずれが大きくなっていき、そりゃそうなるだろという結末へ突進。駅からアパートへの風景と、二つの家の中のシーンがうっすらと綺麗。固定電話をすげえ振り回してた。

KING OF PRISM PRIDE the HERO応援上映】』日本 監督:菱田正和 (TOHOシネマズ六本木)

2作目にして手加減無用。面白さと高揚感が連続する麻薬。さらに今作では、演出が実際のドラマ(現実)に影響を与え、驚愕のリアリティライン超越!「ファンの力でリアル(興行)を変えたこと」まで表現しているという作品。体感時間が110分くらいあり、どう考えても上映時間70分だったとは思えない。おそらく脳内麻薬(プリズムの煌めき)が冒頭から終わりまで出続けていたのだろう。SWフォースの覚醒/シン・ゴジラ/君の名は。/スプリットと、ネタバレ前に観た方が絶対楽しめる映画が色々ありました。『KING OF PRISM PRIDE the HERO』にも、知らずに観ると驚愕で開いた口が塞がらないような事象があるので、感想読む前にすぐ観た方がいいです。1作目『KING OF PRISM by PrettyRhythm』は、TVアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』のあくまでスピンオフという感じだったけど『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は1作目キンプリの続編なのに、プリティーリズム・レインボーライブ新作劇場版という感じもあり、良い。

『友だちの恋人』 1987年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

市役所勤めの普通の女子とイケてる女子大生が偶然知り合い、その彼氏&友人のハンサム二人も参戦。言動と行動が一致せぬ四角関係になる。王道少女まんがのようなラブコメ。最後のシーンで場内笑い漏れる。キャンパスや行楽地の風景も綺麗だった。

 『22年目の告白−私が殺人犯です−』日本 監督:入江悠 (新宿ピカデリー)

連続殺人犯が時効後に現れ、世間を揺るがす。話題性優先の報道と真実 等、今時のフックが多々ありつつも、まず娯楽映画として予測の何倍か面白い。ネタバレ厳禁。すぐ観た方がいい!

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『劇場版 屍囚獄 結ノ篇』日本 監督:城定秀夫 (シネマート新宿)

前篇で既に終盤に見えたが、スプラッタ映画として続く。後篇も低予算セクシーホラーながら、ネタに逃げず真面目。ジャンルとしてお決まりの進行のようでいて、見たことないようなシチュエーションが連なる。前篇のダイジェストが結構長く、それだけはいらなかった。

映画 山田孝之3D』日本 監督:松江哲明山下敦弘 (TOHOシネマズ新宿)

山田孝之にインタビューし、徐々に過去の記憶を遡るフェイクドキュメント映画。3D空間ならではの、漫画の効果線の様な演出がある。真面目を装ってるがほぼコメディ。長い悪戯だったドラマの延長戦。

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コレクションする女』1966年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

友達の別荘に泊まったら、色んな男と次々寝る美少女が居候してた。と書くと青年誌エロコメみたいだが、主人公の男は例によってひどい理屈野郎なのでうまくいかない。皆ほぼダラダラブラブラしてるだけという、ゆるいバカンスぶりがいい。

モード家の一夜』1968年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

男が友人の差し金で、そんなにタイプではない美人の家に一晩泊まっておどおどする。しかし、前から気になってた女の子と知り合えたのでそっちに行く。例によって超絶理屈っぽい男が、自分を正当化するためにめちゃ喋る喋る。壁ドンシーンが既にあるぞ。

『愛の昼下がり』1972年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

奥さんが二人目の子を妊娠。だが男の奥さんへの気持ちは妙に薄れつつある。そこに、昔遊んだメンヘラ女が現れ、じわじわ接近してきた! おしゃれ恋愛映画などではなく、不倫我慢選手権。限界ダメ男と、何枚もうわ手の女との恋愛バトル映画。

『LOGAN ローガン』 アメリカ 監督:ジェームズ・マンゴールド (TOHOシネマズ日劇)

近い未来、残ったのは、一人のヒーローと、介護老人と、虐待されている少女。表面上は悪の軍隊が敵に見えるが、本当に立ちはだかっているのは終わりはじめた社会そのもの。様々な積み重ねの豊かさも含め、映画としての高みに達した、X-MENの凄い最終回。

緑の光線』1985年 フランス 監督:エリック・ロメール (角川シネマ有楽町)

彼氏のできない女の人が、何か行動したほうがいいのかもということで、友人親族と一緒にバカンスしたり、色んな観光地をうろうろしてみるが、何か違う。何故か自分には全く出会いが無い。いや、本当にそうなのだろうか?という実に沁みる映画。

バイオハザード ヴェンデッタ』日本 監督:辻本貴則 (新宿ピカデリー)

ゲーム版ベースにしたCGアニメ映画の新作。結構楽しいアクションCGアニメ。ラクーンシティの生き残りと、他の人たちとの戦闘力の差が激しい。レベッカ激カワイイと思ってると、黒幕の心とシンクロし変な気持ちになる。

こどもつかい』日本 監督:清水崇 (新宿ピカデリー)

虐待の疑いある大人だけの怪死が続く。Jホラーのルックだが、初めから恐怖を目標にしていないダークファンタジーで、いわゆるホラー映画ではない。出てくる大人の半分位が児童虐待してるなかなか厭な映画。

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『牯嶺街少年殺人事件(4Kレストア・デジタルリマスター版)』1991年 監督:エドワード・ヤン (UPLINK渋谷)

60年代台湾。一人の少年に視点を向け、学校/不良少年グループ/大人/入り乱れの青春を4時間濃縮。全シーン映画的。理不尽が静かに畳みかけ続ける。

 『肉体の門』1964年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

終戦直後の東京の闇市。ずぶとく生き抜いてるパンパングループだが、一人の強い男を匿ったことでサークルクラッシャー宍戸錠が男の野性溢れる帰還兵というキャラなのだが、それにしても濃すぎて笑ってしまう。調べたら、あの廃墟の町が有楽町なのか!

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午前10時の映画祭での『裏窓』はオールタイムベスト級に最高。

KING OF PRISM PRIDE the HERO応援上映】』も最高の映画体験。

『サウダーヂ』『美しい星』『22年目の告白−私が殺人犯です−』なども素晴らしかった。

次回 2017年映画感想ツイートまとめ その4(7月8月分 47本くらい) - 映画とかのおはなしブログ

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映画感想『ペンギン・ハイウェイ』この夏唯一の「夏アニメ」

2018年 日本 監督:石田祐康 (ヒューマントラストシネマ渋谷)

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さわやかで冷静。この夏唯一のクールな「夏アニメ」

日本のとある郊外の町。そこに謎のペンギン発生現象が起きる。何事にも研究熱心な秀才小学生のアオヤマ君は友達と一緒にペンギンの調査を始める。

このアニメ、『ペンギン・ハイウェイ』というタイトルですが、ペンギンが出続けるわけではなく、実はペンギンがメインの作品ではありません。この作品の核はふたつ。ひとつは、小学4年生にして頭が良すぎるアオヤマ君の知的で冷静なキャラクター。アオヤマ君は、偉い大人になるために、色々なものごとに関心を持ち研究しています。その関心は周囲の生き物から自分の感情まで幅広く、日々、ノートに研究日誌をつけています。その性格は、漫画やアニメにありがちな紋切り型のガリ勉タイプではありません。常に冷静。いじめっ子に対しても論理的に反論。時には怖い作り話をして反撃するような芯の通った性格です。

ふたつ目の核は、舞台となる町そのものです。電車の終点駅の立地にある郊外の町。比較的新しくて小さい、開拓されたニュータウンが、山や森に隣接し囲まれています。この特殊な立地のため、小学生から見ると、学校や病院やショッピングモールのある綺麗なご町内でありつつ、自然も豊かで、子供が徒歩で行ける範囲内に未知の森もある。この町ひとつで完結した世界になっています。町の端が「世界の果て」であるかのような行き止まり感もありながら、人工的な都市の美しさも持っています。この町が舞台でなければ『ペンギン・ハイウェイ』のお話は成り立ちません。私は7年くらい前に、この映画の舞台のモデルとなった町のイオンにたまたま行ったことがありますが、その時点ではまだ町の開発途中で、昭和の仮面ライダーが怪人と戦っていそうな空き地などがたくさんある場所でした。

↓モデルとなった関西の学研奈良登美ヶ丘駅周辺をレポートされている方。

日々是妄想ペンギン・ハイウェイ舞台探訪記

小学生が年上のお姉さんにあこがれつつも、ペンギン発生という「すこし・ふしぎ」な事件の謎を解くという、ひと夏の、地に足の着いた小さな冒険を描く日常アニメ、だと思っていると、予想をアゲてくれるワンダフルなSFイメージが飛び出す瞬間が何段階か待っています。上映時間は少し長く、ジブリ作品や細田アニメのような最上の作画を楽しむアニメでもありません。しかし、アオヤマ君の冷静さとリンクしているような熱をおさえた作風と、カッチリとした画づくりには今までのいわゆる「夏アニメ」とは違った魅力があり、後半になればなるほど楽しめました。

毎年「夏休みはアニメだ!」というタイミングで劇場アニメが公開されている夏。この夏の劇場アニメも複数の作品が公開されています。ですが、『未来のミライ』は、家の中という限定空間と、子供の内面の話なので夏のアニメとは言い難い内容でした。『詩季折々』『ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間』も、夏とは関係ない短編集でした。「夏らしい夏アニメが観たい欲望」をお持ちの方は『ペンギン・ハイウェイ』がオススメです!

 『ペンギン・ハイウェイ』のパンフレット

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フルカラー38ページ。主要キャストのインタビューを網羅。監督✖キャラクターデザイン✖監督助手の対談と原作者・森見登美彦、脚本・上田誠、音楽・上田誠のインタビュー。本城まなみ(女優・エッセイスト)のコラムと、大森望(翻訳家・書評家)のSF解説も収録。さらに劇中に登場するアオヤマ君の研究ノートの中身と、お友達が書いた町の探検地図を掲載してくれているのがうれしい。良いパンフレットです。

penguin-highway.com

 

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2017年映画感想ツイートまとめその2(3月4月分およそ36本分)

前回 2017年映画感想ツイートまとめその1(1月2月分およそ50本) - 映画とかのおはなしブログ

元は「〇〇なう」形式なので整理。当時の感情こそが貴重なので、今の意見は足さず、当時のまま残す。観た作品全部の感想を書いているわけではない。()は観賞した映画館orメディア。

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『劇場版プリパラ み~んなでかがやけ!キラリン☆スターライブ(らぁらのコース)』 日本 総監督:森脇真琴 、監督:大久保政雄 (新宿バルト9)

冒頭から適当な説明でロケットで出発。ノンストップでキラキラ騒ぎがやかましく突き進むドラッグ映画。前作にあった頭のおかしなカオスは控えめ。プリパラにしては普通のファンムービーであった。

国道20号線』2006年 日本 監督:富田克也 (新宿Ksシネマ)

ゼロ年代の地方。渋滞/消費者金融ATM/パチンコ/シンナーにまみれる、ありふれた貧困を描いた映画。2016年に名作が大量に生まれたバイオレンス邦画に10年先駆けている作品。

『退屈な日々にさようならを』日本 監督:今泉力哉 (新宿Ksシネマ)

眼鏡の映画監督を主人公にした前半1/3は抜群にユーモラスなシュールコメディで面白く引き込まれた。途中の昔話から急に真面目になり、人が死んで残された人々を描く昔ながらの日本映画になる。

花物語バビロン』1997年 日本 

『バビロン2-THE OZAWA-』2012年 日本 監督:相澤虎之助 (新宿Ksシネマ)

前者は一人の若者によるタイの阿片レポート。2はベトナムをぶらつく男が戦争の歴史に飲み込まれる劇映画だが、ほとんどフェイクドキュメンタリーのようなリアリティ!

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『ボヤージュ・オブ・タイム』フランス・ドイツ・アメリカ合作 監督:テレンス・マリック (TOHOシネマズシャンテ)

地球ができるとこから生命誕生→進化→人類は何処へ行くのか的な奴までを追う自然ドキュメンタリー映画。お勉強系ではなく、美麗な映像のハッタリ一点攻めという、少し変わったトリップ映画。

『哭声 コクソン』 韓国 監督:ナ・ホンジン (楽天地シネマズ錦糸町)

韓国の田舎町で連続する猟奇殺人。山奥に住む鬼のような日本人のせいだとも。出だしから抜群に面白い猟奇ミステリーが予想できぬ方へ二転三転「悪魔」が浸食。恐怖と緊張そして謎謎謎の傑作ホラー映画。抜群に面白い上に、観る人によって様々に解釈できる作品であり、さらにネタバレ要素(予想外の展開)が一杯ある。ホラー/スリラー/バイオレンス映画/コメディ/謎の映画/などが好きな人はネタバレ入る前に今すぐ観た方がいいです。

 『雲の上』 2003年 日本 監督:富田克也 (新宿Ksシネマで)

出所した男が地元の田舎に戻るが、居場所無し。破滅寸前の友人と関わる中で、自分も破滅していく。画質の粗い色あせた映像と、頭の中に響くような音響により、シャブ中の記憶のような印象を残す映画。

ジムノペディに乱れる』2016年 日本 監督:行定勲 (楽天地シネマズ錦糸町)

板尾創路演ずる売れてないが一部で評価されている映画監督がモテまくる。「自分の映画の特集上映の舞台挨拶の最中に、関係を持った女二人と彼氏がいて修羅場」というかつてないシーンがある(笑)

『愚行録』 日本 監督:石川慶 (丸の内ピカデリー)

一家惨殺事件の真実を追い取材を続ける雑誌記者と、逮捕されたその妹の告白。明らかになっていく事実。並行して、冒頭のバス内での出来事を皮切りに、登場人物全員が持つ黒い違和感が溜まっていく。薄ら怖い映画。この作品には、2016年の暴力犯罪邦画群ほかとの延長線上のシンクロニシティがあり、合わせて観ると面白い。『葛城事件』『クリーピー』『ヒメアノ~ル』『怒り』などの黒い映画だけでなく『SCOOP!』『何者』『At the terrace テラスにて』あたりとも重なるモチーフがある。

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『スレイブメン』日本 監督: 井口昇 (シネマート新宿)

内気で冴えない男の子が変身能力を身に着けて活躍するヒーロー映画…ではない!。後悔と失敗と気の迷いと間違いしかない、雑な世にも奇妙な物語。なのに、最後には謎の爽やかさなやさしさが残るという、異常な映画。

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『アナザサイド サロメの娘 remix』日本 監督:七里圭 (新宿Ksシネマ)

母を亡くした女性が記憶を辿る?  脳に響く特殊な音響&劇映画/イメージ映像/前衛舞台の混ざり重なりで人の思考のゆらぎを表現したような、他に無い映画。未体験の映画体験となった。

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『風に濡れた女』2016年 日本 監督: 塩田明彦 (楽天地シネマズ錦糸町)

孤独を求めて森のそばの掘っ立て小屋に住む男。謎のつよエロい女が現れ、関わろうと無闇につきまとってくる。出会い-移動の冒頭5分で既に映画的面白さをかなり感じる。驚愕の濡れ場も!

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『リング』1927年 イギリス 監督:アルフレッド・ヒッチコック (東銀座 東劇/ 特集上映「ヒッチコック9」)

サイレント映画を映画館で観ること自体が初めて。全てを眼の視力で鑑賞しなければいけないというか、普段の映画観賞とは脳の使い方のモードが違うようで戸惑った。今の映画観賞って半分くらい耳で観ているんだなー。

『沈黙-サイレンス-』 監督:マーティン・スコセッシ (角川シネマ有楽町)

敬虔な宣教師が行方不明の師を追って潜入した日本は、村人が無惨に虐げられる クラシック時代劇邦画の名作のような地獄の世界だった!重く深刻な内容で、観た後に頭痛が・・・

キングコング髑髏島の巨神(IMAX 3D)』 アメリカ 監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ (TOHOシネマズ新宿)

ベトナム戦争帰還中の部隊が調査する謎の島は怪獣だらけの地獄だった! キンゴジ/モスゴジ/エビラ/ゴジラの息子 のような東宝南海モノ怪獣映画と、ベトナム戦争映画の合流!期待通りの厚切りステーキコース料理! 新怪獣スカルクローラーは、『モスラ対ゴジラ』の怪骨なのかなー。

『牝猫たち』2016年 日本 監督: 白石和彌 (楽天地シネマズ錦糸町)

3人の風俗嬢と、それぞれが出会う男たちの悲しい群像劇。池袋駅徒歩圏4分が舞台で関東の人なら知ってる場所ばかり出てくる。孤独老人やシングルマザー問題のエピソードがつらい!(それが良い)

『やさしい女<デジタル・リマスター版>』1969年 フランス 監督:ロベール・ブレッソン (下高井戸シネマ)

妻が自殺した夫婦。出会いから結婚・すれ違いの行方を回想していく。淡々と人の無理解を描くドラマだが、冒頭30秒で既に映画的興奮が輝き、最後まで緊張が続く。

『ドラゴン×マッハ!』2015年 香港・中国合作 監督:ソイ・チェン (新文芸坐)

タイトルから想像できるようなバカ映画ではなく、ハードボイルド神アクション映画。多様な人物が錯綜し、本筋が掴みにくい前半から一転。囚人大暴動シーンからは、マジ強い強過ぎる奴らの闘いが続く。雑魚一人一人でも生身でXMEN並に強いぞ!

『劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』日本 監督:伊藤智彦 (シネリーブル池袋)

ポケモンGOの1万倍凄いARゲームが流行しはじめた近い未来。大規模イベントが始まるが裏で怪しい動きが。ARの題材でSF度がぐっと増し、都心の各名所が妖しく美しく映える。TVアニメからの続編としても胸熱でTV1クール分観たように充実。

『暗黒女子』日本 監督:耶雲哉治 (丸の内TOEI)

お嬢様女子高の憧れ生徒が謎の死。取り巻き5人が闇鍋パーティでそれぞれ目線の犯人発表おはなし会。話が次々と食い違う。小品だが少女らの悪い笑顔の顔面や清水富美加さん怪演など見所もある。予告編の数が多いです

映画『暗黒女子』オフィシャルサイト

『T2 トレインスポッティング』イギリス 監督:ダニー・ボイル (丸の内ピカデリー爆音映画祭)

BGMのビートが心臓に響くような爆音だと最初は感じるも、すぐに慣れて溶け込む。普通に面白い中年青春映画だったが、1を当時リアルタイムで観た人は1000倍楽しめるのだろう。

『ハードコア』 ロシア・アメリカ合作 監督:イリヤ・ナイシュラー (楽天地シネマズ錦糸町)

超サイボーグ兵士として蘇った男の視点のみで展開するP.O.V映画。脱出/潜入/銃撃/強すぎる敵/容赦ないバイオレンス/開花する戦闘力…。王道アクション娯楽映画の主役一人称で観続ける。かつてない映画体験!

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『ストロングマン』 2015年 ギリシャ 監督:アティナ・ラヒル・ツァンガリ (新宿シネマカリテ)

暇なセレブ男達が洋上で1番優秀な男を決めるゲームを行う。寝相から栄養状態まで、様々な要素について、よく分からん勝手な基準で必死に張り合う。自分もくだらんことに拘ってなかったかと思えてくる静かなコメディ。

この時点で2017年映画館で観た新作(2番館初見含む)が50本越えた。

ここまでの現状ベスト11

※昨年観た作品の再見や名画座旧作は除く
サバイバルファミリー
ハードコア
風に濡れた女
愚行録
変魚路
ドラゴン×マッハ!
なりゆきな魂、
ネオン・デーモン
KARATE KILL
哭声コクソン
人魚姫

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『グレートウォール(IMAX3D)』中国・アメリカ合作 監督:チャン・イーモウ (T・ジョイPRINCE品川)

宋時代の中国。1万体のグエムルVS最強要塞万里の長城の人力超兵器! 群体の怪獣を描いた新しいタイプの怪獣映画。ハイテンポでエンタメ濃縮。予想を上回る面白さだった。怪獣の1体1体がグエムルくらい強くて1万体以上で襲ってくるけど、人間側はあくまでも誇張した達人レベルの強さで超能力者はいない世界。主人公側もホークアイと中国的立体機動装置を駆使する女竜騎士くらいの強さ。基本的に人口の多さを駆使して人力で対抗するというのが良い。オリジナル怪獣の饕餮(トウテツ)。隕石から出てきたらしいけど、生物を何でも食う生命の敵という性質は『キングコング』のスカルクローラーと同じ。怪獣に効果のある黄色い薬(エビラに出てきたやつ)は髑髏島の住人も使っていた。将軍の子孫かもしれない同じ役者も骸骨島調査団にいたし、どうやら同じ世界みたい。

『MATSUMOTO TRIBE』 日本 監督:二宮健 (新宿武蔵野館)

知識ゼロ観賞。おかしな役者松本ファイターを追いかけた軽薄なドキュメントなんだなと思ってたら、無茶苦茶になり仰天!爆笑! 男なのに広瀬す〇の写真使用の偽履歴書でオーディションに乗り込むのは笑った。映画や役者を題材にした作品かな?くらいの認識で、過去作の存在も出演者も全く知らずの観賞。21時台の新宿で何か1本観ようと選んだだけ。その状態で観られたのがベストの映画体験だった。一期一会の映画体験求めている人は情報遮断してすぐ観るのがおすすめ。頭おかしい事態に巻き込まれる前に、女優の松本穂香さんが追い込まれる場面。それまでの無茶苦茶ギャグとのシリアス度合の段差に戦慄。先輩役者として追い込んだ高野春樹さん、調べたら『ケンとカズ』のヤクザやってた方で、そりゃ怖いわと納得。

www.youtube.com『ゴースト・イン・ザ・シェル(字幕2D)』 アメリカ 監督:ルパート・サンダース (TOHOシネマズ六本木)

場面は所々アニメ再現してはいるが、魂の抜けた「攻殻やってみた」。もしMCU新ヒーロー映画1作目が超凡作だったら、くらいの悲しいバランス。杓子定規のロボ警官モノになってしまった。原作読まずに作ったの?

押井守パトレイバー 首都決戦(2015)』の光学迷彩ヘリ、グレイ「ゴースト」の元ネタは、試作ステルス戦闘機YF-23 試作2号機の愛称。試作1号機は「ブラック・ウィドウII」らしく、『首都決戦』はハナから押井守が実写版スカヨハ攻殻とどう対峙するかという映画だったのかと今になって分かる。

『ハッピーアワー』2015年 日本 監督:濱口竜介 (シアターイメージフォーラム)

女性4人を主軸に人と人とのコミュニケーションの苦しさや希望を描く5時間17分。対話やイベントを長スパンで同時間体験。彼女らと、三宮駅の周辺で数日間過ごした気持ちになる濃密な傑作。

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『まんが島』日本 監督:守屋文雄 (新宿Ksシネマ)

謎の島で狂っていく売れない漫画家達の話だが、漫画家映画ではない。今の世の中の男たち半分のどうしようもない焦燥感だけを塗りつけた、がむしゃらなトリップ映画。そして少しの癒し。宇野祥平さんが出てますよ。

 『PASSION』2008年 日本 監督:濱口竜介 (シアターイメージフォーラム)

横浜を舞台にした男女6人が惚れた惚れられたのトレンディドラマが、次第にザワザワしてくる。突然の「暴力に関する授業(!)」で映画が正体を現す。本音を対話する凄い映画。

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 『らぶれたあ』 1958年 日本 監督:鈴木清順 (新文芸坐)

手紙で交流していた思い人が別人で双子の兄弟だったんで困っちゃう、という超ベタなメロドラマ短編。当て馬役で出演のフランク永井「ラブ・レター」のMVが映画になったような印象。(大林宜彦監督のAKB48『So long!』的な)

『「恐怖劇場アンバランス」木乃伊の恋』1973年 日本 監督:鈴木清順 (新文芸坐 )

江戸時代に掘り出されたミイラが生き仏と敬われる。次第に卑しい餓鬼になり村がパニックになる。という怪奇コメディと、現代でそのお話に囚われる未亡人に起こる怪談。という、すげえヘンな話。江戸パート終盤に一瞬ヤバイものが映る。

『モアナと伝説の海(吹替2D)』アメリカ 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ (T・ジョイPRINCE品川)

アナ雪の女性の自立テーマを発展させ、アーロと少年のサバイバル要素も合流。更に、宮﨑駿とワンピースの良さを取り入れて王道少年漫画アレンジに進化。ディズニープリンセス(じゃない)映画。ガチで殺しにくる悪者の邪悪さが怖い!

フリー・ファイヤーアメリカ 監督:ベン・ウィートリー (渋谷TOEI)

銃で1、2発撃たれて致命傷になっても人はすぐには死なない。というリアリティの銃撃戦映画。ワルどもが全員撃って撃たれて重傷。足を引きずりながらも撃って撃たれてボロボロになっていくリアルバトル。

夜は短し歩けよ乙女』日本 監督:湯浅政明 (渋谷HUMAXシネマズで)

京都の町中。酒飲みたちの熱狂の一夜にそれぞれ巻き込まれる先輩と乙女。自然に始まりそのまま最後までノンストップ。93分が永遠の夜に感じられるセカイ系青春トリップ映画。

バンコクナイツ』日本 監督:富田克也 (渋谷アップリンク)

元恋人の娼婦と久々に再開した元自衛官の男。街を抜け地方を巡り人々の生活と戦争の痕跡を目にする。夜の街バンコクでのゲスな日本人男も色濃く描かれる。悠久の時間の流れも感じる偉業の邦画。

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新作では『哭声 コクソン』『愚行録』『風に濡れた女』『MATSUMOTO TRIBE』『バンコクナイツ』が年間ベスト級。旧作では濱口竜介監督の『ハッピーアワー』『PASSION』がどちらも衝撃的な映画体験だった。

 

次回

tenguotoko.hatenablog.com

 

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映画感想 阪元裕吾『ハングマンズ・ノット』暴力人間 対 サイコ殺人鬼のVS映画

2017年 日本 監督:阪元裕吾 (キネカ大森「夏のホラー秘宝祭り2018」で観賞)

面白いバイオレンス邦画がいっぱい公開され続ける嬉しい状況

2016年の邦画は暴力/犯罪映画の名作が同時多発的に続けざまに公開される素晴らしい状況でした。私的なリアルタイム映画鑑賞記録視点では、渋谷アップリンクでの見逃した映画特集『孤高の遠吠(監督:小林勇貴)』からスタート。それから、『ディストラクション・ベイビーズ』『ヒメアノ~ル』『クリーピー 偽りの隣人』『日本で一番悪い奴ら』『葛城事件』『ケンとカズ』『怒り』『無垢の祈り』『淵に立つ』と、インディーズから巨匠の大作まで、容赦ない暴力と黒い感情が渦巻く名作傑作が、毎月公開! 2017年になってからも『なりゆきな魂、』『愚行録』『全員死刑』『ビジランテ』など、その流れを継ぐ作品があり、新しいバイオンレンス/暴力犯罪映画が、邦画のいちジャンルとして確立した感があります。

2016年以前のこのジャンルの息吹を辿ると、白石晃司監督の『バチアタリ暴力人間(2010)』『超・悪人(2011)』といった、ありえないほど悪い奴を描いたバイオレンス作品群がひとつあり、もう一方では、空賊・富田克也監督の『国道20号線(2007)』『サウダーヂ(2011)』といった日本の郊外の貧困と半グレを描いた作品があり、それらの「あからさまな暴力」と「貧困などの日本の閉塞的状況」が混ざりあって、今の日本の新しいバイオレンス映画が生まれているような肌感覚があります。『ハングマンズ・ノット』もこの流れをくむ作品です。

こんどはVSだ!暴力人間 対 サイコ殺人鬼

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 ニコ生配信中のカップルの家に土足で乗り込んでくるDQNグループ。「自分が負け続けたパチンコ台でカップルの彼氏が勝っていたから」という無茶苦茶な理由で家宅侵入。暴行!恐喝!悪逆の限りをつくします。彼らは警察にもマークされている半グレ集団。タコ焼きから葬式のお坊さん(!)まで、欲しいものは全て恐喝・恫喝・拉致・殺人で手に入れる最低の奴らです。

一方で描かれる、電車の中でひとりでブツブツ喋っている根暗そうな男。一見、ただのコミュ症オタク風青年ですが、大学内で見かけただけの片思いの女の子のことを、自分と付き合っている彼女だと脳内変換。話したこともない女の子の家に侵入し、サプライズで誕生日パーティの準備をしてしまう、最低に気の狂ったストーカー殺人鬼でした。

 今の京都という、映画的に珍しい舞台の中で、DQNグループの途方もない胸糞悪い犯罪と、サイコ殺人鬼の話の通じないヤバさが交互に描かれていきます。DQNグループは白石晃司監督『暴力人間』的な存在。サイコ殺人鬼はホラー映画/サスペンスドラマ的な存在。それぞれ別種の「悪」ですが、両者共に自分のことしか考えておらず、あまりに利己的すぎるため、逆に笑えてしまいます。ここまで悪いとかヤバいとしか書いていませんが、この作品は爆笑コメディです。謎の存在感持つ犯罪請負人「後醍醐親子」がテロップつきで急に登場した時などは、あきらかに怖さよりオモシロの感情が上回りました。

そして、絶対に他者と相容れないこの二組が出会った時、どうなってしまうのだろうか?。それを期待してしまいます。怪獣映画や『貞子VS伽椰子』ではありませんが、強大な悪と悪がぶつかり合うのを傍観したいVS映画としての魅力もあるのです。今の日本のバイオレンス映画好きの方にオススメです!

 

『ハングマンズノット』 - ゆうばり叛逆映画祭2018 / Yubari Hangyaku Film Festival 2018

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2017年映画感想ツイートまとめその1(1月2月分およそ50本)

前回 2016年映画感想tweetまとめ(後編)&2016年ベスト - 映画とかのおはなしブログ

元は「〇〇なう」形式なので整理。当時の感情こそが貴重なので、今の意見は足さず、当時のまま残す。観た作品全部の感想を書いているわけではない。()は観賞した映画館orメディア。昨年からの映画中毒がおさまらず映画観まくり。1月2月だけで50本くらい感想を書いている。

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『ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」』 (シアターイメージフォーラム)

短編「25日・最初の日(68)」「ケルジェネツの戦い(71)」「キツネとウサギ(73)」「アオサギとツル(74)」「霧の中のハリネズミ(75)」を上映。絵画や絵本が動いてるようなアニメ。最後の2作が特に観たことない映像表現。暗く厳しいのにかわゆいという独特の気持ちになった。

裸足の季節』 2016年 フランス・トルコ・ドイツ合作 監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン (ギンレイホール)

もっと青春寄りキャッキャウフフな話かと思ったら、「ちょっと前向きなトルコの葛城事件」って感じ。結構つらめの深刻な話。

パリ、テキサス1984年 フランス・西ドイツ合作 監督:ビム・ベンダース (早稲田松竹)

テキサスの荒野で記憶喪失の男が見つかる。映画が進むにつれ、事情が見えてくると共に男の記憶も戻ってくる。男の素性周りの真相はかなりどうでもよかったが、序盤 弟の家までの移動と、後半 奥さんを見つけるまでの旅の、先のわからない先に進む感じが良かった。

雨月物語』1953年 日本 監督:溝口健二 (角川シネマ新宿)

野心に執着した二人の男の戦国無情時代劇を見ていたら、いつの間にか一方の途中が幽霊怪談になる。でも、恐ろしい話として終わるのではなく、いい話っぽくなるという不思議な印象。琵琶湖と幽霊屋敷のシーンはこの世でない感があった。

傷物語III 冷血篇』日本 総監督:新房昭之、 監督:尾石達也 (TOHOシネマズ新宿)

漫画やアニメで不死能力は珍しくないが、この作品では、首が跳ねても治る不死同士の本気のバトルが無茶苦茶な勢いで描かれる。大勢のキャラがいるシリーズの90分長編なのに、登場人物4人のみで進むのも凄い。キャストも4人だけ!

 『ラビッド』1977年 カナダ 監督:デビッド・クローネンバーグ (新文芸坐)

オールナイト1本目。事故で瀕死になり謎オペを受けた女が吸血生物に。血を吸われた人は感染ゾンビ化する。感染源である女の人がモンスターでありつつも主役でもある点と、政府の感染への対応が細かく描かれる点が珍しかった。沢山の清掃車が感染者を淡々と回収していく絵面が印象的。

『ブラッド・ピーセス/悪魔のチェーンソー』 1982年 スペイン・アメリカプエルトリコ・イタリア合作 監督:ファン・ピケール・シモン (新文芸坐)

オールナイト2本目。ハロウィンに悪魔のいけにえを少し混ぜた感じを狙ったスラッシャームービーに少年探偵ミステリー要素を足して、更にスクール青春感をふりかけてしまったヘンなエンタメ映画。プロテニス選手が何故か警察の派遣で潜入捜査官をするぞ。

『マッキラー』1972年 イタリア 監督:ルシオ・フルチ (新文芸坐)

オールナイト3本目。イタリアの山奥の町で起こる土着の呪いの殺人事件。B級スプラッタかと思いきや、そういう雰囲気は持ちつつも、これが意外にも立派なサスペンス映画!山の中の高速道路を背景にしたショットや綺麗な町並み、大人数の捜査官など、良いシーンがかなりある。

『ゾンビ3』1980年 イタリア 監督:アンドレア・ビアンキ (新文芸坐)

オールナイト4本目。嘘の邦題で、原題は「THE NIGHTS OF TERROR」という作品。サンゲリアを超劣化させたような困ったゾンビ映画。山奥の別荘を買った金持ちを地面から出たゾンビが襲うのみで物語はなし。ゾンビの絵面が汚く、スクリーン大写しがキツかった。しかし、昨日から今朝にかけて、ヴィム・ヴェンダース2本立て→溝口健二新房昭之と、最上の奴を連続で観たのに最後をゾンビ3で締めるという振れ幅最大の映画観賞をしてしまった。

『団地』2016年 日本 監督:阪本順治 (アップリンク渋谷「見逃した映画特集」)

団地に住み始めた夫婦とその住人を描いたコメディ。予告で想像できるような、よくあるタイプの日本映画ではなく、静かに面白い。更に、予想できない展開をする。まさに見逃していた映画という趣き。

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山椒大夫』1954年 日本 監督:溝口健二 (角川シネマ新宿)

平安時代無常話。誘拐され荘園の奴隷にされた兄妹が、この上なくつらい思いをする。奴隷描写が残酷で本当にかわいそう。面白くもなく、感動もしておらず、主人公の行動もイラつくのに、終わってみると一時も目が離せていなかったという、今までにない映画体験だった。

『風の中の牝雞』1948年 日本 監督:小津安二郎 (神保町シアター )

終戦後、戦争から夫の帰りを待つ妻とようやく帰ってきた夫の無常話。だが黒沢清解釈の「夫は幽霊で妻も階段落ちで死んでる説」を踏まえて観ると、新聞社もタイムライフなんて名前で意味深。道に干した服も土管の奥の人も戦死者幽霊なのだろうか…

赤ちゃん教育』1983年 アメリカ 監督:ハワード・ホークス (シネマヴェーラ渋谷で)

結婚間際の生物学者が、超マイペースドジっ娘お嬢様とのドタバタに巻き込まれる。それだけでも超絶面白いが、そこに本物の豹と犬が加わり周囲の人も巻き込まれ…。「普通に面白い」タイプの面白さの映画の中で最上ではないかという程面白かった。

狩人の夜』 1955年 アメリカ 監督:チャールズ・ロートン (レンタルDVD)

大恐慌アメリカ。紳士を装った怪しい牧師が家庭を乗っ取りにやってきた!大金を狙って小さい兄妹をいつまでも追ってくる男がとても怖い。ノワールと分類されているようだけどサイコホラーだと感じた。

押井守特集〈ファンタジーの試行〉(東京国立近代美術館フィルムセンター)

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この順番で観ると、最後の『アサルトガールズ』がより楽しめるようになる(楽しくはない)という、謎の贅沢な座組だったw。周りのお客さんおじいさんばかりで押井ファンは少なそうだった。事故の様な映画体験になったのではと想像。

『KILLERSキラーズ/.50 Woman』は、謎の外国人女性スナイパーが三鷹の森病院に入院している悪徳横領プロデューサー鈴木敏夫を暗殺するために延々待機しながら菓子パン/おにぎり/ミネラルウォーターの食事を続けるだけの短編で笑った。

フィルムセンターには初めて行ったけど、客層は箱についてる常連さんみたいな雰囲気のおじいさんが多かった。大量の未公開映画を観てる人たちだと思うんだけど、近くの常連同士で「あれもう観た?スターウォーズハリーポッターは?」みたいな会話していて価値観?の逆転が起きている…

『パッセージ 牙剥く森』2015年 オーストラリア 監督:デビッド・キャンベル (ヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2017」)

バカンス中の男女が、幽霊が出るという森の道路で肝試ししてホラーな目に。霊に襲われると死ぬが、登場人物が6人しかいないので大したホラーは起きない。暗くて何が起きてるかイマイチ分からんのだった…

『レジデント』2015年 デンマーク 監督:ボー・ミケルセン (ヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2017」)

超低予算だが、見せ方にひと工夫あるデンマークゾンビ映画。対応の早い政府は住人が事態を認識するより先に街を封鎖。家々が黒シートに包まれ隔離された住宅地。ゾンビがほとんど姿を現さないのに独特の存在感がある。

『新・平家物語』1955年 日本 監督:溝口健二 (角川シネマ新宿)

若き平清盛が熱血。セットが美しく、画面に登場する人の数が膨大で情報量が多い。人が入り乱れる市場や何百人もの僧兵が山を下るシーンなど、迫力ある場面が多数あった。先日観た山椒大夫と原作者が違うが、少し先の時期の話で続編のようにも感じる。

西鶴一代女』1952年 日本  監督:溝口健二、『浪華悲歌』1936年 日本  監督:溝口健二 (角川シネマ新宿)

前者は後者のリメイク感もある。一人の女性が周囲の無理解と貧乏で酷い不幸になる話。無責任でクズな男(女もいるか)しか出てこない。この可哀想で悲惨な女シリーズが後にゴダールとかに継がれるのか…

『マッドマックス怒りのデス・ロード〈ブラック&クローム エディション〉4DX2D』アメリカ 監督:ジョージ・ミラー (ユナイテッドシネマ豊洲)

この作品自体は3度目。構図の美しさやマシンディテールが白黒で鮮鋭となり神話感。座席から落とされそうな振動、煙、雷光、水浴びの嬉しさ。4DXはこの作品の為にあったのか!これまた最高!

新宿スワンⅡ』日本 監督:園子温 (TOHOシネマズ新宿)

歌舞伎町舞台でさぞ臨場感あるだろうと思いきや、すぐ横浜に行く。前作より明るい雰囲気になりスカウト達もなんか仲良し。ヤクザ映画風の熱血サラリーマン映画みたい。大量の人物が出るが、広瀬アリス中野裕太など主要人物の出番の凹凸がなんかおかしく、ヘンな気持ちになる。シリアスな話で登場人物達は命懸け。だけど後半のキャバ嬢コンテストになったら、さっきまで潰し合いしてた奴らがスポーツ観戦状態でわちゃわちゃ。お前コンテストに出る側だろという広瀬アリスも普通にひな壇側にいるのもヘン。不思議な踊りを披露し、なんか可愛いからキミが優勝!みたいになって笑った。

『HOUSE/ハウス』1977年 日本 監督:大林宜彦 (目黒シネマ)

10年位前ビデオで観たきり、劇場は初。スクリーンで観ると冒頭から既に夢の中のよう。物語だけなら残酷な幽霊屋敷譚なのに、少女漫画的ルンルンお花畑が突き抜けて、テンション高い謎の異次元視覚体験に。まだJホラーの概念が無い時代の作品だけど、「入浴中に湧き出てきて襲おうとする謎の長い髪の毛」は既に登場していた。幽霊が猫の姿にもなるのは呪怨が引きついでる。家に喰われた犠牲者が生首で漂う謎時空は白石晃士監督がコワすぎ等でリスペクトしているのかな?。大林監督の旧作を全部映画館で観たいです。

吸血鬼ゴケミドロ』 1968年 日本 監督:佐藤肇 (目黒シネマ)

怪しく不穏な夕焼けの中を飛ぶ飛行機。爆弾テロ予告が入り内密に荷物検査をする→それとは無関係の暗殺者がハイジャック→と思ったら窓の外に謎の発行体が見えて墜落!という冒頭の展開が凄い!生存者のいざこざ展開は退屈だが、ゴケミドロの存在感は独特だった。今回の『HOUSE/ハウス(1977)』『吸血鬼ゴケミドロ(1968)』の併映。佐藤肇監督がHOUSEのノベライズも手掛けたからという大林監督の意図らしい。怪しい夕焼けもここから引用したのかな。ゴケミドロは時期的に『世にも怪奇な物語 (1967)』「悪魔の首飾り」を引用っぽいけど。

 『お遊さま』1951年 日本 監督:溝口健二 (角川シネマ新宿)

未亡人お遊さんの妹がお見合いするが、男はお遊さんに惚れる。仮面夫婦とお遊さんの3人による無理のある逃げ恥生活。他に観た溝口作品より主要人物やショックな出来事が少なく地味なのだが、その分不思議な長回しショットなどをじっくり堪能できた。

『BLACK JACK 瞳の中の訪問者』 1977年 日本 監督:大林宜彦 (目黒シネマ)

2年ぶりの観賞、劇場では初。幼稚では無くかといって劇画的なものとも違う「手塚漫画」的なものを実写で表現した唯一無二の映画。映画館廃墟からのSL&ピアノ→海・湖の異常テンションが素晴らしかった。公開当時の評価は低かったらしいが、宍戸錠ブラックジャックが顔面の汚らしい小太りオッサンなせいと、手塚治虫リテラシーがある程度無いと分からない要素があることが原因じゃないかな。宍戸錠の芝居自体は漫画を意識しているし、女の子が演じて声優が吹き替えてるピノコは結構凄い。この後で『瞳の中の訪問者』原作エピソード「春一番」を久々に読み返してみた。原作だと瞳に映る男は証拠隠滅の為に殺そうとする。映画では角膜主である一度殺したパリの元恋人への思いを忘れられず再び殺そうとする。つまり映画では、女が瞳に映る男に囚われているだけでなく、男も自分の頭の中の女だけを見ている。

『はなればなれに』1964年 フランス 監督:ジャン=リュック・ゴダール (新宿シネマカリテ)

クズ男2人が一人の女の子に惚れて楽しい時を過ごす。だが、そのうち女の子をそそのかして大金を盗もうとしてしまう。内容の半分以上の内容がヒロインのアンナ・カリーナの萌え映画だったぞ。

『東北の神武たち』1957年 日本 監督:市川崑 (シネマヴェーラ渋谷)

東北の山奥すぎる貧乏過ぎる集落。口減らしの慣習で、長男以外の男達はヤッコという半奴隷の身分。今のホームレス以下のド汚いビジュアルの男達。その中でも臭いと除け者にされる一人の男の、ほのぼの日常コメディが神話になる(!)

 『アンチポルノ』 日本 監督: 園子温 (新宿武蔵野館)

タイトル通りポルノ映画ではなく、日本の表現の自由など諸々に疑問を訴えるようなメッセージ映画。原色の部屋が目に焼き付く中、夢/妄想/劇中劇/現実/回想の境目が反転したり混ざる感じが面白かった。いわゆる映画ファンが観るよりも、普段アニメしか観なくてシャフトアニメのシリアス回とかセカイ系アニメの精神の内面を描く回とかが好きな人が観てみると作風がマッチして非常に楽しめると思う。

『EVIL IDOL SONG』 日本 監督:大畑創 (キネカ大森)

いわゆるJホラーではない。前半は2016年日本の芸能ゴシップの雰囲気を刻む魔女的ホラー。だが、能天気な人物達の行動により展開は斜め上の上に進む。後半は、死が溢れるのに優しい時間が漂うヘンテコなほのぼの爆笑コメディになる(!)。悪魔になったヒロインと、悪魔の歌を聴いて聴力を失った事務所の社長が、二人で仲良く楽曲づくりを地道にするシーンでは笑ってしまった。まさかこれ、耳が聞こえなくなった人でも音楽作れるでしょという映画『FAKE』への大畑監督なりのアンサー?

 『なりゆきな魂、』日本 監督:瀬々敬久 (渋谷ユーロスペース)

バス事故で生き残った人々の会合を中心に、今の日本を象徴するかのような不条理に様々な人が見舞われる様を錯綜して描く。突発的理不尽・時系列の狂い・話の繋がらなさが独特の印象を残す強烈な映画。この作品は、2016年暴力犯罪邦画群の遅れてきたまとめのような印象。ディストラクションベイビーズ/淵に立つ/永い言い訳/怒り/華魂 幻影をミキサーにかけて、さらに海外からイレブンミニッツの思想を振りかけて、ロマンポルノリブートしてからちゃぶ台をひっくり返したような映画!。さらには、井の頭公園に関する偶然のシンクロニシティにより、松江哲明『ライブテープ(2009)』とTVアニメ『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-(2016)』を事前に観ておくと、生と死の錯綜感がアップし、より一層楽しめてしまうのでオススメです。

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『変魚路』 2016年 日本 監督:高嶺剛 (シアターイメージフォーラム)

全編沖縄弁の東京弁字幕!シュール演劇みたいな神話のような何か。見えないモノも自然に映る。超カルト作品だが、単にそう呼んでしまうのも違う。沖縄の本質かのような謎の優しさと悠久の時間が在る超映画!。序盤は「ホーリーマウンテン」と「この空の花 -長岡花火物語」を同時に観てるようなヤバイ映画だ!と思うのですが、だんだんそれらとはまた別の、よくわからんヤバイダウナーなトリップが広がるので、変な映画が好きな人はとにかくすぐ観ればいいです。

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ネオン・デーモン』2016年 フランス・アメリカ・デンマーク合作 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン (TOHOシネマズ六本木)

新人モデルの辛苦ドラマかもと思いきや、業界の裏スリラー、→を装ったサイコホラー、→の皮を被った何か別の映画!? 怪奇少女ホラーまんがを、超スタイリッシュにしたような楽しさもある。

『人魚姫』2016年  中国・香港合作 監督:チャウ・シンチー ( シネマート新宿)

海を開発する無敵若社長と、その暗殺を狙う超絶かわいい天然人魚の特撮ラブコメ。昭和東宝怪獣映画とアイアンマンと赤ちゃん教育を一度に観たようなデタラメな勢いと情熱。予想以上にめちゃ面白く、ひっくり返った!

ドクター・ストレンジ(IMAX3D字幕)』 アメリカ 監督:スコット・デリクソン (TジョイPRINCE品川)

異次元規模のデカイ話なようだが、病院内と通り抜けフープで繋がった4つの建物周辺だけの話なのでスケールは小さい。IMAX3Dならではの異次元没入体験ができるシーンが3回くらいあり、そことラスボス戦は良かった。

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』2016年 アメリカ 監督:リチャード・リンクレイター (渋谷アップリンク)

大学入学で野球部の寮に入り授業開始までの3日間。延々続く調子こいたバカ騒ぎ。それをずっと見ているうちに永遠に思えた青春の無限の可能性/輝きそのものを感じる。

虐殺器官』 日本 監督:村瀬修功 (TOHOシネマズ日本橋)

多発する大量虐殺の謎を追う近未来戦争・潜入捜査サスペンス。ゼロ年代中盤くらいまでのシリアス深夜アニメが持っていた空気感のある「今作られたゼロ年代アニメ」。原作未読なのに懐かしい気持ちになった。

『ストーカー』1979年 ソ連 監督:アンドレイ・タルコフスキー (新宿ksシネマ)

劇場で観るのは初。謎のエリア「ゾーン」を探索しようとする二人の男と案内人。抜群に綺麗な画と、謎に満ちているが異常な部分は見えないという異空間表現が良く、「難解で寝る(笑」みたいな印象では全く無い、クールなSF映画だった!。この作品を初めて映画館で観て気付いたこと。昨年DVDで一度観てるのだが、その時の記憶がトロッコ以降欠落していてゾーンに入ってからは初見としか思えない。まさかあの時、序盤以降ほとんど寝てたのに自分で気づいてなかったのか!(笑

『サバイバルファミリー』 日本 監督:矢口史靖 (TOHOシネマズ新宿)

東京で突然の停電?と思いきや、あらゆる電気が使用不可能に。水も食料も無くなる。徐々に物々交換になる様子や、高速道路を西へ移動していく人々など、程よいリアリティがあり予想より面白くなる。基本はコメディなんだけど、死や治安の悪化もうっすら描かれている。街がざわついていく感じや噂が浸透していく感じなど、徐々に日本の日常が崩壊していくのが家族の周囲の描写だけで分かる。『アイアムアヒーロー』などゾンビ映画に通じる雰囲気もあった。

『ホワイトリリー』 日本 監督:中田秀夫 (新宿武蔵野館)

奔放な女性陶芸家と、その弟子となった真面目な女の子のドロドロした恋愛映画。執着してるけどそれは愛なの?みたいな話。終盤、みんな裸でおかしくなった中に突然別の女がまた乱入し脱ぎだすシーンでは近くの席の知らない人と一緒に笑ってしまった。

『SCOOP!』 2016年 日本 監督:大根仁 (目黒シネマ)

凄腕のパパラッチカメラマンが、編集部入りたての新人の女の子の面倒を見ながら特ダネを狙うことに。福山雅治演じる下衆くて時代遅れだがプロフェッショナルで情に熱いカメラマンが痛快。コンビで次々と特ダネを狙う前半がテンポ良く、かなり楽しい娯楽映画。

『何者』2016年 日本 監督:三浦大輔 (目黒シネマ)

一緒に就活に励む意識高い系大学生たちの輝ける青春… は表向き。ほとんどの人物が上滑り&マウンティング。何も掴めないままもがき続ける背筋の凍る青春映画。この感想を書くことですら作品に取り憑かれそうな怖い作品。

『SCOOP!』と『何者』の2本立て上映。二階堂ふみさんがメインで出演しているという部分以外にもリンクがある。『SCOOP!』では、入りたての新人と行く先が見えないベテランや仕事・業界を描いている。『何者』で描かれたことの延長線上にあり、連続で観ると独特の印象になる。

グリーンルーム』2015年 アメリカ 監督:ジェレミー・ソルニエ (新宿シネマカリテ)

不良パンクバンドが殺人現場を目撃。消されそうになる。一部屋に立てこもり、なんとか脱出しようとする。不慮の状況だが、敵味方各人物がパニックにならず、少し考えてから行動するという探り合いが面白い。

『夜のプリティーリズム・レインボーライブ4週連続一挙上映会 』2週目 2013年 日本 監督:菱田正和 (新宿バルト9)

TVアニメ第14話~26話を上映。だんだん各キャラの感情ほとばしるメロドラマのつるべうち展開になってくる。映画館で観ると、後のキンプリに繋がるステージの高揚感は既に存在。応援上映でないが自然に拍手が巻き起こった。

『At the terrace テラスにて』2016年 日本 監督:山内ケンジ (新宿武蔵野館)

大きな家のパーティー。顔見知り程度の人らがテラスに出入りしてかみ合わぬお喋り。なぜ話題がそっちに?当人達にはキツいが、眺めているこっちからはめちゃ面白いというコメディ。

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『夜のプリティーリズム・レインボーライブ4週連続一挙上映会 』3週目 2013年 日本 監督:菱田正和 (新宿バルト9)

オールナイト3週目。TVアニメ第27話~39話を上映。主役9人の友情と家族のお話を少しずつ織り重ねていった結果、このクールになると愛と感動のメロドラマが毎話 嵐のように巻き起こる名作に化ける! 交差の起点となる第35話が特に素晴らしかった。

『SYNCHRONIZER』2015年 日本 監督:万田邦敏 (渋谷ユーロスペース)

脳波で義手を動かす研究をしている男が、母親の認知症治療目的に人間同士の脳波を同期させようとするが、繰り返すうちに違和感が侵食する。90年代Vシネマの空気も感じる静かな科学怪奇映画。

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散歩する惑星』 2000年 スウェーデン・フランス合作 監督: ロイ・アンダーソン (北千住シネマブルースタジオ)

どこかの都市。どこかへ行こうとする人々による車の大渋滞やデモが街中に広がる。人々は不条理を嘆く。全ショットが映画的。科学要素無いのにSFにも見える凄い映画!。黒沢清監督がのちに『トウキョウソナタ(2008)』で大いにオマージュしているような感じがする。また、後半の凄い遠くからゆ~っくり近づいてくる幽霊(死の気配?)は、のちに『イットフォローズ』が上手くホラー演出に転用してるのかも。

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『シャークネード4(ザ フォース アウェイクンズ)』2016年 アメリカ 監督:アンソニー・C・フェランテ (レンタルDVD)

4作目なのに悪ふざけの積み重ねと謎の家族愛の勢いが衰えない。冒頭からの安易なスターウォーズパロディ以上に、5年間シャークネードが発生してない設定なのに開始6分くらいで新たなシャークネードが発生する潔さがとてつもなく面白い(6分にはスターウォーズ風オープニングロールの時間も含まれています)。竜巻サイドがパワーアップして、ファイヤーネードや原子力発電所を巻き込んだニュークリアネードになる。一方、主人公側もパワードスーツやサイボーグで対抗。楽しい怪獣災害映画に。

 

赤ちゃん教育』も『人魚姫』も『散歩する惑星』も目黒シネマでの『HOUSE/ハウス』もバルト9での『プリティーリズム・レインボーライブ』オールナイト上映も最高だった。

3月分に続く

tenguotoko.hatenablog.com

 

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映画感想 ジャック・ターナー『悪魔の夜(1957)』

1957年 イギリス、アメリカ 監督:ジャック・ターナー (アテネ・フランセ文化センター 特集「中原昌也への白紙委任状」で観賞)

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悪魔を崇拝するカルト宗教の教祖を批判した教授が怪死。共同研究者だった心理学者ホールデンは、怪しい教祖の追求を続ける。しかし、気づかぬうちに「3日後に死ぬ呪い」がかかっているという羊皮紙を受け取ってしまう。教祖は本当に黒魔術を使うとでもいうのか?

悪魔が出てくるのに、本当にいるのか分からない!

冒頭、何かから逃げようと夜の森の道路を車で飛ばす教授。そこに、闇の中に浮かぶ煙と炎の中から、悪魔が現れます。狼とムササビを足したような容貌で8メートルくらいの巨体。DVDジャケットにもいますが、見た目は怪獣。慌てた教授は運転を失敗。ぶつかった電柱につぶされ死亡してしまいます。

この映画が独特なのは、冒頭に怪獣のような悪魔をはっきりと登場させておきながら、唯一の目撃者が死んでしまい進行する点。観客は映画の最初に教授が悪魔に襲われた一部始終を見ていますが、他に目撃者はいない。主人公たち劇中の人物からは、怪死に近い交通事故として扱われます。

主人公のホールデンも、教祖から「3日後に死ぬ呪い」をかけられた後、体調が悪くなっていき、やはり森の中で一人でいるときに悪魔に追われます。映画のシーンとしては、あからさまに悪魔は出てきます。しかし、悪魔教の教祖が催眠術の使い手であることも分かってきます。つまり、ホールデンは催眠術にかけられて幻覚を見ているだけの可能性もある。今の目線で観るとチープな着ぐるみ的でもある「怪獣のような悪魔」が、あからさまに出てきて人が襲われるシーンがあるにもかかわらず、悪魔がいるのかいないのかが曖昧なのです。

 ホラーとサスペンスを揺れ動くバランスと、その先の恐怖

 映画全体の温度も独特のバランスです。悪魔や悪魔教や催眠術が登場するオカルトホラーですが、主人公たちは悪魔の存在を知らず、呪いの存在についても、悪魔教のインチキを暴こうとしている立場で懐疑的です。つまり、悪魔教の教祖が教授の怪死に関わっているのではないかと暴こうとする立場。ヒッチコック作品のような、犯人に襲われながらも追及していくようなサスペンス映画のスタイルとなっています。

この「地に足の着いたリアルなサスペンス映画的作風」により、「あからさまな悪魔」のようなオカルトが画面に登場したときの異常さが際立ち、現実が揺れ動く感じがします。特にラスト、列車へ教祖を追跡し悪魔登場からエンドまでの流れは、異常さと可笑しさとクールが混ざって凄かったです。

そのような、現実が揺れ動く感じ、「真実は誰にも分からないが確かに人は死んでいる」という不安、といった、この映画を観ていて生じる感情。これが、キリスト教圏の人が持っているという「悪魔に対する恐怖」なのかもしれません。

ちなみに、「受け取ったら3日後に死ぬ羊皮紙」を受け取ってしまい、謎を解こうと奮闘する感覚は、『リング(1998年、日本、監督:中田秀夫)』に遺伝子が継がれている感じがしました。

 

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