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【映画感想】『レネットとミラベル 四つの冒険(86)』日常系アニメより20年早い萌え日常コメディ

(1986年 フランス 監督:エリック・ロメール)

早稲田松竹ラシックス vol.136 エリック・ロメール監督特集で観賞。

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数年前に下高井戸シネマで『海辺のポーリーヌ(83)』観て以来ロメール作品が好きになり、毎年都内のどこかの映画館がやってくれる特集上映に行くようになりました。レンタル店では取り扱いが少なく、あってもVHSだけが多い。DVDは発売していますが、天然の自然と街と人物がなんとも言えない輝きを持って描写されている作品が多く、初見は映画館のスクリーンで観賞したいと思わせてくれる監督なのです。ロメール作品は可愛い系の作品とクズ男系の作品がありますが、今作は可愛い系です。

この作品、映画サイトなどでは「全4話からなる短編オムニバス」と紹介されていることが多いです。ですが「オムニバス」と言ってしまうと無関係の4つの短編のようにも思えてしまうので「短編全4話の映画」という方が印象に合っています。

田舎暮らしをしながら独学で絵を学ぶ女の子レネット(かわいい)と、都会暮らしの女の子ミラベル(かわいい)がたまたま知り合い、一緒に暮らし始めます。田舎で出会うエピソード1話。パリに出てからの3話の全4話構成。この4話の中に、今の日本の日常系アニメ的な作品へ繋がる遺伝子がたっぷり含まれていると感じました。今回はアニメファン目線からのススメです。

第1話「青い時間」は、田舎で二人の仲が徐々に深まっていくお話。ミラベルの自転車のパンクがきっかけで知り合った二人。レネットが暮らす美しい自然に囲まれた中で他愛のないお喋り。田舎でしか味わえないちょっぴり素敵な瞬間を体験します。ちょっぴり奇跡な自然現象の瞬間を体験した二人の仲が深まるという似た展開は、同じロメールの先行作品『緑の光線(86)』で男女が体験しています。また、ロメールに先んじて大林宜彦監督が『天国にいちばん近い島(84)』でも描写していますが、これも男女。この作品では女の子二人が体験。これは百合確定。このエピソードにおける、ゆるやかな自然と素敵なできごとは、現在放送中でもあるアニメ『あまんちゅ!』シリーズ(原作:天野こずえ 総監督:佐藤順一)や、アニメ『ヤマノススメ』シリーズ(原作:しろ 監督:山本裕介)にも通じる素敵さです。

第2話~4話からは舞台がパリに移動。ミラベルのアパートにレネットがルームシェアし、都会暮らしをはじめます。第2話からはレネットから見た都会の暮らしにくさの表現なのか、ヤバいカフェ店員おじさん、小銭くれくれおじさん、意識高い系の画廊の店主といった、クセの強いおかしな人が現れるコメディ映画となります。コメディといっても笑い一辺倒ではなく、ギャグもあり、ほっこりあり、友情あり、考えさせられる話もある。萌え4コマ系アニメの趣きに通じる面白さがありました。第2話と第4話のオチは声を出して笑いました。

日常系アニメが好きな人で、外国の実写映画も観てみようかな?という方がいれば、ぜひ観てください。(ちなみに同じロメール監督でも『コレクションする女(67)』『海辺のポーリーヌ(83)』『夏物語(96)』などは週刊漫画誌系ラブコメっぽいかも?)

ところで、映画評論家の蓮實重彥さんは、著書『映画に目が眩んで(1991,中央公論社)』の中で、この作品について以下のように評されています。

ほとんど目に見えない大気の流れとなってあたりにはじけ散るような快楽の次元が、若い女性の肉体そのものに集中し、よりフォーカスはせばめられている。(前書:p460-461) 

この表現。今の言葉で言えば「萌える」の一言につきるでしょう。