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映画感想『ペンギン・ハイウェイ』この夏唯一の「夏アニメ」

2018年 日本 監督:石田祐康 (ヒューマントラストシネマ渋谷)

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さわやかで冷静。この夏唯一のクールな「夏アニメ」

日本のとある郊外の町。そこに謎のペンギン発生現象が起きる。何事にも研究熱心な秀才小学生のアオヤマ君は友達と一緒にペンギンの調査を始める。

このアニメ、『ペンギン・ハイウェイ』というタイトルですが、ペンギンが出続けるわけではなく、実はペンギンがメインの作品ではありません。この作品の核はふたつ。ひとつは、小学4年生にして頭が良すぎるアオヤマ君の知的で冷静なキャラクター。アオヤマ君は、偉い大人になるために、色々なものごとに関心を持ち研究しています。その関心は周囲の生き物から自分の感情まで幅広く、日々、ノートに研究日誌をつけています。その性格は、漫画やアニメにありがちな紋切り型のガリ勉タイプではありません。常に冷静。いじめっ子に対しても論理的に反論。時には怖い作り話をして反撃するような芯の通った性格です。

ふたつ目の核は、舞台となる町そのものです。電車の終点駅の立地にある郊外の町。比較的新しくて小さい、開拓されたニュータウンが、山や森に隣接し囲まれています。この特殊な立地のため、小学生から見ると、学校や病院やショッピングモールのある綺麗なご町内でありつつ、自然も豊かで、子供が徒歩で行ける範囲内に未知の森もある。この町ひとつで完結した世界になっています。町の端が「世界の果て」であるかのような行き止まり感もありながら、人工的な都市の美しさも持っています。この町が舞台でなければ『ペンギン・ハイウェイ』のお話は成り立ちません。私は7年くらい前に、この映画の舞台のモデルとなった町のイオンにたまたま行ったことがありますが、その時点ではまだ町の開発途中で、昭和の仮面ライダーが怪人と戦っていそうな空き地などがたくさんある場所でした。

↓モデルとなった関西の学研奈良登美ヶ丘駅周辺をレポートされている方。

日々是妄想ペンギン・ハイウェイ舞台探訪記

小学生が年上のお姉さんにあこがれつつも、ペンギン発生という「すこし・ふしぎ」な事件の謎を解くという、ひと夏の、地に足の着いた小さな冒険を描く日常アニメ、だと思っていると、予想をアゲてくれるワンダフルなSFイメージが飛び出す瞬間が何段階か待っています。上映時間は少し長く、ジブリ作品や細田アニメのような最上の作画を楽しむアニメでもありません。しかし、アオヤマ君の冷静さとリンクしているような熱をおさえた作風と、カッチリとした画づくりには今までのいわゆる「夏アニメ」とは違った魅力があり、後半になればなるほど楽しめました。

毎年「夏休みはアニメだ!」というタイミングで劇場アニメが公開されている夏。この夏の劇場アニメも複数の作品が公開されています。ですが、『未来のミライ』は、家の中という限定空間と、子供の内面の話なので夏のアニメとは言い難い内容でした。『詩季折々』『ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間』も、夏とは関係ない短編集でした。「夏らしい夏アニメが観たい欲望」をお持ちの方は『ペンギン・ハイウェイ』がオススメです!

 『ペンギン・ハイウェイ』のパンフレット

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フルカラー38ページ。主要キャストのインタビューを網羅。監督✖キャラクターデザイン✖監督助手の対談と原作者・森見登美彦、脚本・上田誠、音楽・上田誠のインタビュー。本城まなみ(女優・エッセイスト)のコラムと、大森望(翻訳家・書評家)のSF解説も収録。さらに劇中に登場するアオヤマ君の研究ノートの中身と、お友達が書いた町の探検地図を掲載してくれているのがうれしい。良いパンフレットです。

penguin-highway.com

 

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