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映画感想『若おかみは小学生!』2018年邦画劇場アニメトップクラス作品

2018年 日本 監督:高坂希太郎 (池袋HUMAXシネマ)

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予備知識は不要

2018年。世は女児アニメ戦国時代。超正統派変身ヒロインアニメシリーズの最新作『HUGっと!プリキュア』。これまた正統派アイドルアニメシリーズの最新作『アイカツフレンズ』。アイカツのライバルとして作風を変えながら続くプリティーシリーズの最新作『キラッとプリ☆チャン』の3作が正面で殴り合いを続ける中、ファンシーキャラクターここたまシリーズの最新作『キラキラハッピー☆ ひらけ!ここたま』まで始まり飽和状態。そんな中、『若おかみは小学生!』は、児童文学のベストセラーを原作とし、それらとは違う路線のTVアニメとして放送されていたようです。この劇場版『若おかみは小学生!』は、TVアニメの総集編や続編としての劇場版ではなく、独立した1本の映画作品。似てる関係でいうなら、『銀河鉄道999』のTVアニメ版と劇場版のような関係性の作品です。

シリアスなヒューマンドラマ

原作の挿絵をベースとして、キャラクターデザインの見た目は完全に女児アニメのルックです。ですが、上記に挙げたような玩具販促系エンタメ作品とは作風が全く違います。年少向け少女漫画くらいの、ほのぼの日常まんがだと思って観賞すると、プロローグからキツい顔面パンチをくらうでしょう。楽しい家族ドライブ中、冒頭からいきなり交通事故で両親を亡くすというハードな展開。この作品は、両親を失った小学生の女の子が親戚の温泉旅館に引き取られ、否応なしに新しい生活をはじめるというヒューマンドラマです。

若おかみは小学生!』は立派な幽霊映画でもあります。主人公のおっこは、事故でひとり生き残ったことをきっかけにふたりの幽霊や鬼が見えるようになり、一緒に過ごすようになります。この幽霊キャラクターたちの立ち位置が良い。彼らはいかにもテレビまんがな造形の非常にかわいらしいキャラクターですが、基本的にはおっこ一人にしか見えません。彼らは、新しい土地で生活をはじめることになったおっこの大切な友達として同じ時間を過ごします。旅館で若おかみとして様々な人々と接していく中、他の人たちの人生にも様々な別れや事情があるということに触れ、少しずつ両親の死という現実を受け入れていくおっこ。それに呼応して、映画が終盤に近づくにつれ、少しずつ、おっこからは彼らが見えなくなっていきます。「幽霊キャラ」という、TVまんがとしては類型的なキャラクターを使い、ひとりの女の子が現実と向き合えるようになっていく心を本当にたくみに演出しています。その流れが集約していくラストのシークエンスは、さわやかさと切なさと希望が入り混じり、本当にお見事でした!

2018年の他の映画で感触が近いのは、同じくひとりの子供が死という現実に触れる『リメンバー・ミー』でしょうか。ここ数年観たたくさんの大人向け映画のを含めても、残された人が大切な人の死を受け入れていく様を『若おかみは小学生!』くらい映画一本かけて真正面から描いた作品は、他に『永い言い訳(2016年、監督:西川美和)』くらいだった気がします。2018年の邦画劇場アニメ作品は11本くらい観賞していますが、断トツのトップです。普段はキッズ向けアニメ映画は見ないという方も、上映が終わらないうちに、ぜひ映画館に行ってください!

若おかみは小学生!』のパンフレット

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32ページフルカラー。監督インタビュー2ページ。プロダクションノート3ページ。レビューコラムは、NON STYLE井上さん、モデルとなった旅館 美山総荘の女将:中東佐知子さん、映画ライター:藤咲ちとせさんの3コラムを掲載。舞台となった架空の温泉街&春の屋旅館のMAPガイドや、劇中に出てくる料理を実際に作れるレシピも嬉しいです。キッズアニメのパンフレットは、作品によっては児童向け絵本冊子として作られていて映画作品のパンフとしては厳しい場合もありますが、これはかなりちゃんとしたパンフレットです。このパンフレットを読まなければ、おばあちゃん役の声優さん一龍斎春水さんが『宇宙戦艦ヤマト』森雪の麻上洋子さんだとは分かりませんでした。

www.waka-okami.jp

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