映画とかのおはなしブログ

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2017年映画感想ツイートまとめ その4(7月8月分 47本くらい)

前回 2017年映画感想ツイートまとめ その3(5月6月分およそ48本) - 映画とかのおはなしブログ

元は「〇〇なう」形式なので整理。当時の感情こそが貴重なので、今の意見は足さず、当時のまま残す。観た作品全部の感想を書いているわけではない。()は観賞した映画館orメディア。大作映画も単館上映系も日本の若きインディ監督の作品も旧作の上映も面白い作品が本当に多く、充実していた2か月間。

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ミスティック・リバー』2003年 アメリカ 監督:クリント・イーストウッド (池袋 新文芸坐)

警察の捜査が遅く杜撰なせいで、ヤンキーおっさんが娘の殺人犯を間違えて私刑してしまう。間違われる側のおっさんはあまりにも運が悪すぎて可哀想。映画としての見た目は立派だか、警察が無能なせいで残念になる警察無能映画の一つに認定します。

ピアニストを撃て』1960年 フランス 監督:フランソワ・トリュフォー (池袋 新文芸坐)

ピアニストが悪者に狙われる。DVDで観てもいまいち頭に入らなかったが、劇場で観ても同じ印象。男の子が犯罪者二人に車で拉致される場面が、直前に上映したミスティック・リバーにもあったんだけど、もしかして意識して並べているプログラムなのかな?

恋のエチュード』1971年 フランス 監督:フランソワ・トリュフォー (池袋 新文芸坐)

フランス男が英国の美人姉妹の家でいちゃいちゃ暮らす。妹と相思相愛っぽくなるが、男がキモイマザコンであることと、お互いのいらぬ拘りと、それぞれの母が毒親なせいで、ずっとうまくいかない。画は綺麗だが、130分は長すぎてつらかった…

『私のように美しい娘』1972年 フランス 監督:フランソワ・トリュフォー (池袋 新文芸坐)

世間知らずな社会学者のヒョロ男が、研究のため女殺人犯にインタビュー。話を聞くうちに、想像以上にとんでもない女であることが観客には分かってくる。サイコパス犯罪サスペンスなのに、クズ男やバカ男が酷い目に合うコメディという驚きの映画。

『日曜日が待ち遠しい!』1982年 フランス 監督:フランソワ・トリュフォー (池袋 新文芸坐)

隙だらけで態度がでかい不動産屋の男が、簡単にハメられて殺人事件の容疑者にされてしまう。男の聡明な秘書が真犯人を見つけるべくひとりで捜査してめちゃめちゃ頑張る。ドタバタラブコメ感もある楽しいミステリー映画だった。しかし、今回の『世界の映画作家Vol. 187 フランソワ・トリュフォー 愛の変遷』オールナイト上映の4作見た限りでは、トリュフォー作品に出てくる男ってクズしか出てこない感じだな。ロメール作品の理屈野郎共とも違う、下衆な感じ。

『殺しの烙印』1976年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

殺し屋ランクNo.3の男がNo.1を狙って殺し屋同士戦いを繰り広げる。刺激的なショットの戦闘や濃い登場人物達だけで相当面白いのに、ラスボス登場に至ってはセカイ系で世にも奇妙な世界に突入し超面白い! ファイトクラブの元ネタか!?

けんかえれじい』1966年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

誠実なバンカラ男が、岡山で修行(!)しながら喧嘩バトルする前半と、会津若松に転校して小暴れの後半。ハチャメチャ楽しく、HiGH&LOWのご先祖みたい。ヒロイン浅野順子が50年前の作品とは思えぬ可愛さ。連続ドラマの途中のように終わる。主題歌が完全に黎明期のアニソンという感じで良いです。公開はジャングル大帝1作目が放送終了後くらいの時期か。

www.nicovideo.jp

ピストルオペラ』2001年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

なんと「殺しの烙印」のずっと後の話! 全場面に映画的快楽あるスタイリッシュすぎ殺し屋バトルの前半が最高!後 半は演出がさらに突き抜け、魔空空間で戦うセカイ系特撮になってしまう(特撮:樋口真嗣、脚本:伊藤和典)。凄すぎる映画!

オペレッタ狸御殿』2005年 日本 監督:鈴木清順 (神保町シアター)

人間と狸姫の恋を描くお伽噺ミュージカル。浦沢義雄の脚本を鈴木清順が増幅した結果、神々しくノーテンキなロミオとジュリエットが、この世とあの世の狭間で永遠に続いてしまってて大変なことに。

ブラッド・ワーク』2002年 アメリカ 監督:クリント・イーストウッド (池袋 新文芸坐)

心臓移植で一命とりとめた元FBI捜査官が、私的に殺人事件を捜査。現役警察が無能すぎるものの、真っ当に面白いサスペンスだがそれだけではない。真相解明と共に、実は刑事ドラマそのものを終わらせる映画だったということが分かってくる。

『バイバイマン』2017年 アメリカ 監督:ステイシー・タイトル (ヒューマントラスト渋谷)

そいつの名を知ると呪われる。リング系ルール縛り怪談と、エルム街的80年代洋ホラーの雰囲気が融合した佳作。怖い場面としては序盤少女がドア開ける所が好き。幻覚を多用しすぎて、怖さが薄まってしまった面がある。

ハクソー・リッジ』2016年 アメリカ・オーストラリア合作 監督:メル・ギブソン (ユナイテッドシネマお台場)

人を助けたいと不殺誓い銃を持たぬ衛生兵志願の男。おかしな臆病者とみなされるが意志は揺るがず。しかし赴く沖縄戦は日米両陣共にほとんど死ぬ地獄! かつてない激しい戦場描写は、戦争はマジでムリだと分からせる。なのに本質は完成度の高い道徳映画。

メアリと魔女の花』2017年 日本 監督:米林宏昌 (TOHOシネマズスカラ座)

宮崎アニメを広くサンプリングして薄めたプログラムピクチャー。平凡安心まんが映画だが、駿ミックス加減が微妙に狂気を帯びていて多少のヤバみはある。獣のフレンズのリアリティバランスの狂気と、明白に原発の象徴である青い花を最後どうするかに注目。米林宏昌監督。キモい謎生物と、バカなのか頭が狂ってるのかわからん不気味な大人を描くのが上手いので、ジブリっぽい作品よりもホラーアニメ映画を作ってみてほしい。ガチホラーでなくても、諸星大二郎の「栞と紙魚子」のアニメ化とかきっと向いてるぞ。

帝一の國』2017年 日本 監督:永井聡 (池袋HUMAXシネマズ)

政治家の優秀なボンボン息子らが生徒会選挙戦に渾身。学園政争が世の全てと思ってしまい突き進むやつらのハンサム集団青春(政治風刺)滑稽映画。クライマックスは停滞するが、その手前までは現代とマッチしたハイテンポ感で、観ている側も熱狂に巻き込まれる。

『スレンダー 長身の怪人』2015年 アメリカ 監督:ジェームズ・モラン (新宿シネマカリテ /カリコレ)  ※DVDでは『都市伝説:長身の怪人』に改題。

一家失踪事件の取材で見つかったビデオに奇怪な男が映ってることに気づく。「動画を撮り続けないと見えない」というPOV状況作りと雰囲気は上手い。恐怖演出が単調で淡泊なのが残念。

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江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』1969年 日本 監督:石井輝男 (新宿シネマカリテ)

ひとりの男が名家主人の成り済ましを図るが、周囲で謎の殺人が…という筋書は、この映画の説明にならない。冒頭から基地外が大量登場。次々移り変わる展開だけでおかしいが、終盤に至っては、映画としてちょっと信じられない本当に異様なものになる。

『ライフ【IMAX 2D】』2017年 アメリカ 監督:ダニエル・エスピノーサ (Tジョイ品川)

ゼログラビティ的な今どき宇宙隔離状況下で凶暴スライムに襲われる、ちゃんとしたB級SFホラー。こうも期待通りの出来上がりを貫く映画は少なく貴重。宇宙ステーションなのに謎の隙間が多いぞ。

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銀魂』2017年 日本 監督:福田雄一 (丸の内ピカデリー)

前半はギャグの2つに1つは面白いバラエティコント。役者陣は概ね魅力的。シリアスとバトル部分が全く面白くない上にそのパートが長いが、そこも含めて原作に忠実ではある。2作目をやる際は、テンポ2倍速/尺100分でギャグ95%人情5%の喜劇映画をやってほしい。

『PARKS パークス』2016年 日本 監督:瀬田なつき (キネカ大森)

井の頭公園と周辺だけが舞台。映画的ルック強く橋本愛萌え度も高い。お話は「うだつ上がらん女子が昔のオープンリールをきっかけに仲間と出会い輝いていく典型的な普通の青春バンドもの」…だったはずが、いつの間にかそれが夢幻の如く裏返り、霞む。公園そのものの幽霊のような映画。それにしても、井の頭公園が出てくる映画『ライブテープ(09)』『なりゆきな魂、(17)』、この『PARKS(17)』そして、TVアニメ『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』が、全て「死」をモチーフにした作品なのはなぜなのだろう。井の頭公園はアーティストに死をイメージさせる空間なの?

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『DEAD7 デッド・セブン』2016年 アメリカ 監督:ダニー・ローウ (新宿シネマカリテ)

崩壊した未来、ゾンビ軍団を操り人間を滅ぼそうとする悪の軍団に、7人が立ち向かう! マグニフィセント7をゾンビ映画にしてMADMAXをふりかけて、ぬるま湯ですっごい薄めたままのような作品だが、D級映画としてそこそこ面白い。ホラーでなくアクション映画。

『狂覗(きょうし)』2017年 日本 監督:藤井秀剛 (渋谷UPLINK)

体育授業中の誰もいない教室。教師らが生徒の私物を勝手に調べるうちに、実に厭な事態が次々と明らかになっていく。その邪悪はその教室だけの話だろうか? 心霊も殺人鬼もいない普通の人だけの学校で、それらより恐ろしく絶望的な気持ちになる傑作イヤホラー。ほぼ教室だけが舞台の会話劇ですが、昨年(2016)でいうところの『葛城事件』『無垢の祈り』あたりと並ぶ厭な映画なので、そういう映画が観たい方は是非。ネタバレ厳禁映画でもあるので気になる人も本当にすぐご覧ください。

『花に嵐』2016年 日本 監督:岩切一空 (新宿K's cinema)

昨年横浜で観て衝撃受け2回目観賞。さえない1回生が女の子に釣られて撮り始めた只のビデオ動画が、57年分の映画の記憶を土台に、未曽有の青春映画に飛躍。ほん呪とコワすぎの遺伝子さえ受け継ぐ日本映画最前線。

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『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(字幕2D)』2017年 アメリカ 監督:アレックス・カーツマン (ユナイテッドシネマお台場)

中東で発見された謎遺跡からミイラ復活し小暴れ。アドベンチャー映画というほど冒険しない。じゃあホラー映画かというとミイラ王女は怖くなく、ほとんど悪の女幹部。つまり、ダーク系ヒーロー映画の第1話なのだった。

 『麥秋』1951年 日本 監督:小津安二郎 (神保町シアター) 

女性が28歳で売れ残りと言われる古い価値観だった当時。ヒロインに半ば強制的なお見合い話来るが、家族の心配と彼女の気持ちはかみ合わない。辛気臭くなく、そういう風潮も皮肉る軽やかなコメディ。小さい子供の兄弟が途中で死んだかと思ったら最後に普通に出てきた。

『早春』1956年 日本 監督:小津安二郎 (神保町シアター) 

過去に幼い息子を亡くした会社員の社内不倫と夫婦関係/サラリーマンの悲喜/を描いた大人の青春映画。蒲田から丸の内へ通勤電車で毎日通う仲間達という、現代にはないシチュエーションが当時の活気を感じさせる。かなり長く、連ドラ1シーズン観た気持ち。

 『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』2017年 日本 監督:三池崇史 (TOHOシネマズ日本橋)

海外ロケ杜王町は優勝。アンジェロと虹村兄弟話だけだが、これで一本の映画として成立。「祖父が守ろうとした町だから戦う」仗助の動機など、原作時点で存在した心の流れの鮮明化はなるほどと思わされた。

『東京喰種トーキョーグール』2017年 日本 監督:萩原健太郎 (TOHOシネマズ日本橋)

オモシロ萌えキャラバトルロワイヤル漫画になってしまう前の、まだ都市伝説の不気味さが多少あった頃の空気を映画化。王道中二病ダークヒーロー映画の1作目と考えると上品にまとまってる。清水富美加さんまた色んな作品出てください!

 『激動の昭和史 沖縄決戦』1971年 日本 監督:岡本喜八 (新文芸坐)

大本営も司令部も、希望的観測、机上の空論、責任転嫁、目的と手段の履き違え、と判断ミスの連続。それが市民にも伝播し完全無駄死にしていく様子を、二時間半眺め続けるという強烈な映画。今の日本も緩やかにこの状態に陥ってると感じさせる傑作。今回はじめて観たけど、この前の『ハクソー・リッジ』が、思ってた以上にちゃんとこの映画の雰囲気を醸し出そうとしていたのかなと感じた。

天国にいちばん近い島1984年 日本 監督:大林宣彦 (ヒューマントラストシネマ渋谷)

劇場観賞初。原田知世、南の島で何かを探す。日本人の頭の中だけにある理想の南国が本当にあるかのような、映画の中だけの奇跡のニューカレドニア。そこに昔自分も行ったかの如く、偽の美化された記憶を反芻させる幻覚の映画。再見して驚いたのが、日没の瞬間見える緑の光線の話をしていて、それがなんとロメールの『緑の光線(86)』よりも前ということ。元ネタの元ネタが同じジュール・ヴェルヌの小説だからだろうけど、大自然リゾート/フランス/自分探しする女性というシンクロニシティが起きてる。

『ゾンビ【米国劇場公開版】特別音響ウーハー上映(字幕)』1978年 アメリカ 監督:ジョージ・A・ロメロ (塚口サンサン劇場)

映画館観賞は初。十数年ぶりで程よく忘れ、他ゾンビ作品の記憶も混ざって曖昧になっており新鮮な気持ち。恐怖映画というより心底面白い映画という感触。単独作品として見るともうこの最後に人類ほぼ滅んでそう。

トランスフォーマー 最後の騎士王(字幕2D)』2017年 アメリカ 監督:マイケル・ベイ (OSシネマズミント神戸)

いつも通りだろと思ってたら、メッセージ/ローグワン/BFGなどの近年作の良い部分のエキスを加え正統派娯楽映画度UP。クドさが減り軽快テンポ。大好きなTVアニメ第1作を見てる時の楽しい気分に近くなったかも。なんだかんだ言ってマイケル・ベイトランスフォーマーには、映画館からの帰り道にテカテカの車とすれ違うと脳が奴らだと認識してしまう「映画の力」がある。

海底47m』2016年 イギリス 監督:ヨハネス・ロバーツ (シネマート新宿)

野生の鮫観覧ダイビングの檻ボロく海底に落下した二人。人喰い鮫二匹!潜水病!残り少ない酸素!地味ながら、的確にツボを突いて揺さぶられる希望と絶望。海のど真ん中からずっと出られない怖さ。小規模サメ映画ながら秀作。映画館に閉じ込められて観るのがオススメ。

『カーズ クロスロード(吹替2D)』2017年 アメリカ 監督:ブライアン・フィー (新宿ピカデリー) 

ずっとトップだったマックィーンだが有望な新人が多数台頭。さらに大事故で引退の危機。復帰リハビリだけでなく、他の可能性も表出する壮年期映画。こいつ面白い好きな脇役だなぁと思った奴のキャラとしての伸びが想像を越えていた。確かにクロスロードだ。

デス・レース2000年』1975年 アメリカ 監督:ポール・バーテル (新宿シネマカリテ)

未来の米国は大陸横断殺人レースが国民娯楽。悪ふざけで残酷だが明るく爽やか。暗躍するヘボい陰謀。しまいに社会派ヒューマン映画を観たかと錯覚までする。面白すぎる特A級のB級映画! たまたま『カーズ クロスロード』→『デス・レース2000年』と映画館をハシゴしたので、大陸横断殺人レースの車にも遠景ショットだと脳の錯覚で「おめめ」が見えた。

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陽炎座』1981年 日本 監督:北千住シネマブルースタジオ (鈴木清順)

ひとりの男が謎の女と会い惹かれ合う。不倫相手が幽霊という単純な怪談かと思いきや、後半の金沢からは、全員死んでいてあの世なのかもと思わせる異様な世界に突入。よく分からんがスゴ美しい映画。

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スパイダーマン・ホームカミング(IMAX 3D)』2017年 アメリカ 監督:ジョン・ワッツ (Tジョイ品川)

MCU最新話やりつつ理想のスパイダーマン第1話をやるという、針に糸を通すような造り。今までの映画版よりも原作コミックのユーモアがある。冒頭からずっと面白く133分の長さを感じなかった。100点のキャラクター映画。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』2017年 日本 監督:新房昭之 (TOHOシネマズ新宿)

「青春恋愛モノは実写もアニメも全て中学生の妄想だ!」と言い切りつつ、否定するわけではない。曖昧になった子供の頃の記憶を思い出し悲しむような映画。画が完璧に未完成だが奇跡的に上記映画的意味を補強してしまってもいる。後で完全版で出し直すレベルの完成度なので、むしろ今だけのバージョンを映画館で目撃しておいた方がいいと思う。未完成なことにより、あらゆる映画の中で『ゼーガペインADP』だけにある「おぼろげになりつつある昔の記憶」みたいな効果が偶然出てるし…。新房昭之好きで2015年16年と映画ベスト5に入れるくらいは岩井俊二好きで、大根仁『SCOOP!』も楽しく観賞して、広瀬すず菅田将暉さんにも好感と信頼しかなく、その座組で自分用に作られたとしか思えないアニメ映画が未完成だったので「本来あるはずだったもしもの完全版」を脳内に幻視してしまうという無二の映画体験をした。

蠱毒 ミートボールマシン』2017年 日本 監督:西村喜廣 (新宿武蔵野館)

複数の鉄男チック怪人が戦い続けるバカ特撮スプラッター。絵的には血みどろグロテスクだが、普通の娯楽作。役者陣が存在感あり魅力的。男の惨めなプロローグは苦しく良いが、事件発生後からのテンポが冗長だったのが残念。そんなに蠱毒な感じはなかったぞ。

『RE:BORNリボーン』2017年 日本 監督:下村勇二 (新宿武蔵野館)

自営業コンビニ営む元最強の傭兵に刺客。町中で周囲に気づかれずに殺し合う。銃で武装した複数人も瞬殺。マジの殺人技術が行使され続けるダウナーな超アクション映画。戦場最強の男だけの哲学が広がる。

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『血を吸う粘土』2017年 日本 監督:梅沢壮一 (キネカ大森/夏のホラー秘宝祭り)

田舎の鬱屈した美術教室がホラーな目に。血を吸うどころか丸呑みする人食い粘土が想像より不気味。Jホラーの流れではなく、伊藤潤二的な魅力を感じた。近年まれに見る正統派怪奇映画の佳作。

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 『ベイビー・ドライバー』2017年 アメリカ 監督:エドガー・ライト (Tジョイ品川)

凄腕逃がし屋ドライバー少年の青春。歴代自動車犯罪映画のおいしい所を詰め込み更に音楽映画に仕立て上げた、食べ過ぎるフルコース。脳の快感ボタン押されてるきらいはあるが、目茶面白い!

『夢二』1991年 日本 監督:鈴木清順 (北千住シネマブルースタジオ)

画家の竹久夢二と女達。「陽炎座」同様、金沢での奇妙な色恋話だが、今作は地獄感ではなく、夢と寝起きの境目が分からん時のような感触。一周回って、女優をいかに美しく撮るかが主題かもと感じた。

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機甲界ガリアン 鉄の紋章』1986年 日本 監督:高橋良輔 (テアトル新宿/サンライズフェスティバル)

中編OVAのHD上映。スクリーン&大音響で観ると、機甲兵の巨大さ/重量感がかなり良い。敵陣地を襲う機甲兵は怖い。後半の全てである鉄巨神の戦闘は、相手を圧倒し叩き壊していく描写が神話のような迫力。

『さいなら、BAD SAMURAI』2016年 日本 監督:大野大輔 (池ノ上シネマボカン)

自主映画を撮る男(監督本人が演じる)。就職もせず撮った「映画」の仕上がりは、エロ時代劇クソVシネでしかなかった。夢を持つ者達の志と、劇中のZ級映画と、周囲の評価とのギャップがかなり面白いモラトリアムコメディ。

『ウルフなシッシー』2017年 日本 監督:大野大輔 (池ノ上シネマボカン)

俳優のオーディションに落ち続けるダメ女と、映画監督目指してるがスカトロAV業で業界にギリギリいるサイコクズ男の同棲カップルが、めちゃ言い合う。両者のダメさが次々見えてくる面白い会話コメディ。

『人生フルーツ』2017年 日本 監督:伏原健之 (ポレポレ東中野)

昔、多くのニュータウン計画に関わったおじいさんと、その奥さんの生活を記録するドキュメンタリー。素敵なスローライフを伝えるだけの映画だとばかり思っていると、観る側もご夫妻の人生の大事な期間を一緒に過ごしていたことが分かり、引き返せぬ気持ちになる映画。

『逆徒 TERRORIST』2017年 日本 監督:小林勇貴 (ポレポレ東中野)

リンチで死に賽の河原から蘇った不良が殺人鬼に。だが不良達はそこはそんなに気にせず、闇討ち誘拐責任逃れ他人巻き込み型の腐った争いを相変わらず続けるのだった。人間の方が怖い系ホラーともまた違う、現実不良暴力残酷社会コメディ映画。

『聖なるもの』2017年 監督:岩切一空 (新宿K'sシネマ)

映研のダメ男が、幽霊としか思えぬ謎の可愛い女の子主演の映画を撮ろうとする。「めまい」から「超コワすぎ」・おんなのこ映画まで、あらゆる映画の記憶を横断しつつ脳が男の心と同期。傑作の心霊青春映画!

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大作では『ハクソー・リッジ』『スパイダーマン・ホームカミング』
上映館数の少ない作品では『PARKS パークス』『海底47m』『ベイビー・ドライバー
単館作品では『狂覗(きょうし)』『花に嵐』『聖なるもの』『さいなら、BAD SAMURAI』
旧作では『殺しの烙印』『ピストルオペラ』『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』 『激動の昭和史 沖縄決戦』『デス・レース2000年』など、あらゆる意味で面白い作品が本当に多かった。

【次回に続く】

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映画感想『クワイエット・プレイス』アイデア勝利の良作スリラー

2018年 アメリカ 監督:ジョン・クラシンスキー (TOHOシネマズ新宿)

実はこの作品。宣伝ではあまり触れられていない「脅威」の正体はプロローグで分かってしまいます。つまり、その「謎」を楽しむタイプの映画ではないのです。ですが、「音を立てたら、即死。」以外の情報を入れずに観に行った方が楽しみがひとつ増えるのは確か。ですので、それ以上ネタバレしたくない方はネットを閉じてすぐ観に行ってください。

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終末世界サバイバル映画

「何か」の襲来によって人類が滅びかけている世界。社会は崩壊、都市は壊滅。襲来から3か月のうちに、人類はほとんど死亡してしまったようです。そんな誰もいない町中で、残った食料を調達している家族。彼らは、物音を立てることを非常に警戒。足音を立てないように靴も履かず常にはだし。会話もほとんどしようとしません。なぜなら、隕石によって地球に来たその「何か」は、視力は無いが聴力が異常に発達した狂暴なモンスターだったのです。モンスターたちの動きは異常に俊敏で行動範囲も広く、大きな音を立ててしまえば一瞬で現れ、音を立てた生物を一撃で惨殺します。

 この作品は、「音を立てたら、即死。」という状況の中で、なんとか生き延びて日常生活を続けようとする、ひとつの家族に焦点をあてたサバイバル映画です。

ホラーというよりサバイバルサスペンススリラー

大きなジャンルのくくりではモンスターホラーに該当しますが、この作品の面白さはホラー映画的な「恐怖」ではありません。日常生活での、少しのうっかりミスが即・命取りになってしまうという特殊な状況で、かたずをのんで家族を見守るハラハラを楽しむスリラーの面白さです。そのギミック1点だけなら短編でもよさそうですが、その瞬間瞬間のハラハラに加えて、後々で大きな音を出してしまうきっかけになりそうに思わせる、好ましくない情報がちりばめられており、それがいつ発動してしまうのか?というサスペンスが、もうひとつの面白さとなっています。そのサスペンス感の中でも最大のものが、奥さんの妊娠という状況。物音を立てたら殺されてしまう世界で、赤ちゃんが生まれた時、家族は生き残ることができるのでしょうか!?

音と静寂が非常に大事な作品で、映画館の中もポップコーンのガサガサ音すら立てられないような雰囲気。観客の間に緊迫の連帯感がありました。後でDVDや配信で観るよりも、映画館のほうが絶対に楽しめるタイプの作風です。ぜひ劇場でご覧ください!

クワイエット・プレイス』のパンフレット

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フルカラー40ページというボリューム。監督兼主演のジョン・クランスキー含む主演俳優へのインタビュー6ページ。プロダクションノート6ページ。映画ライター高橋論治によるレビュー1ページ半。多くの場面写真も掲載。監督と奥さん役のエミリー・ブラントは実際にご夫婦で、作品もふたりで二人三脚で造りあげていった様子が解説されています。

quietplace.jp

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映画感想『若おかみは小学生!』2018年邦画劇場アニメトップクラス作品

2018年 日本 監督:高坂希太郎 (池袋HUMAXシネマ)

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予備知識は不要

2018年。世は女児アニメ戦国時代。超正統派変身ヒロインアニメシリーズの最新作『HUGっと!プリキュア』。これまた正統派アイドルアニメシリーズの最新作『アイカツフレンズ』。アイカツのライバルとして作風を変えながら続くプリティーシリーズの最新作『キラッとプリ☆チャン』の3作が正面で殴り合いを続ける中、ファンシーキャラクターここたまシリーズの最新作『キラキラハッピー☆ ひらけ!ここたま』まで始まり飽和状態。そんな中、『若おかみは小学生!』は、児童文学のベストセラーを原作とし、それらとは違う路線のTVアニメとして放送されていたようです。この劇場版『若おかみは小学生!』は、TVアニメの総集編や続編としての劇場版ではなく、独立した1本の映画作品。似てる関係でいうなら、『銀河鉄道999』のTVアニメ版と劇場版のような関係性の作品です。

シリアスなヒューマンドラマ

原作の挿絵をベースとして、キャラクターデザインの見た目は完全に女児アニメのルックです。ですが、上記に挙げたような玩具販促系エンタメ作品とは作風が全く違います。年少向け少女漫画くらいの、ほのぼの日常まんがだと思って観賞すると、プロローグからキツい顔面パンチをくらうでしょう。楽しい家族ドライブ中、冒頭からいきなり交通事故で両親を亡くすというハードな展開。この作品は、両親を失った小学生の女の子が親戚の温泉旅館に引き取られ、否応なしに新しい生活をはじめるというヒューマンドラマです。

若おかみは小学生!』は立派な幽霊映画でもあります。主人公のおっこは、事故でひとり生き残ったことをきっかけにふたりの幽霊や鬼が見えるようになり、一緒に過ごすようになります。この幽霊キャラクターたちの立ち位置が良い。彼らはいかにもテレビまんがな造形の非常にかわいらしいキャラクターですが、基本的にはおっこ一人にしか見えません。彼らは、新しい土地で生活をはじめることになったおっこの大切な友達として同じ時間を過ごします。旅館で若おかみとして様々な人々と接していく中、他の人たちの人生にも様々な別れや事情があるということに触れ、少しずつ両親の死という現実を受け入れていくおっこ。それに呼応して、映画が終盤に近づくにつれ、少しずつ、おっこからは彼らが見えなくなっていきます。「幽霊キャラ」という、TVまんがとしては類型的なキャラクターを使い、ひとりの女の子が現実と向き合えるようになっていく心を本当にたくみに演出しています。その流れが集約していくラストのシークエンスは、さわやかさと切なさと希望が入り混じり、本当にお見事でした!

2018年の他の映画で感触が近いのは、同じくひとりの子供が死という現実に触れる『リメンバー・ミー』でしょうか。ここ数年観たたくさんの大人向け映画のを含めても、残された人が大切な人の死を受け入れていく様を『若おかみは小学生!』くらい映画一本かけて真正面から描いた作品は、他に『永い言い訳(2016年、監督:西川美和)』くらいだった気がします。2018年の邦画劇場アニメ作品は11本くらい観賞していますが、断トツのトップです。普段はキッズ向けアニメ映画は見ないという方も、上映が終わらないうちに、ぜひ映画館に行ってください!

若おかみは小学生!』のパンフレット

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32ページフルカラー。監督インタビュー2ページ。プロダクションノート3ページ。レビューコラムは、NON STYLE井上さん、モデルとなった旅館 美山総荘の女将:中東佐知子さん、映画ライター:藤咲ちとせさんの3コラムを掲載。舞台となった架空の温泉街&春の屋旅館のMAPガイドや、劇中に出てくる料理を実際に作れるレシピも嬉しいです。キッズアニメのパンフレットは、作品によっては児童向け絵本冊子として作られていて映画作品のパンフとしては厳しい場合もありますが、これはかなりちゃんとしたパンフレットです。このパンフレットを読まなければ、おばあちゃん役の声優さん一龍斎春水さんが『宇宙戦艦ヤマト』森雪の麻上洋子さんだとは分かりませんでした。

www.waka-okami.jp

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映画感想『死霊館のシスター【ScreenX上映】』怖がらせ特化型エンタメホラー

2018年 アメリカ 監督:コリン・ハーディ (ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場)

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スピンオフだがシリーズ未見でも問題なし

死霊館』シリーズは、昔と比べて洋画も邦画も大作ホラー映画がほとんど絶滅してしまった中で続いている、ありがた~い正統派の心霊/悪魔ホラー映画シリーズ。これまで第1作『死霊館(2013)』、初のスピンオフ『アナベル 死霊館の人形(2014)』、本筋2作目にして名作『死霊館 エンフィールド事件(2016)』、『アナベル 死霊人形の誕生(2017)』と続き、本作はスピンオフ3作目/シリーズ5作目となる作品です。今回のメインとなる怪異は『エンフィールド事件』の中で急に出てきて本当に怖かった謎のシスター。シリーズそれぞれの作品は設定で繋がってはいますが、その繋がりは、何回か見直している人ならニヤリとできる程度。それぞれ個別の映画作品として完結しています。特に今回は時代も『死霊館』から20年くらい前、舞台もルーマニアと全然違う場所になっており、今作から見て全く問題ありません。私は過去シリーズ全作1回ずつだけ観ていますが、細かい部分は全く覚えていません。それでも普通に1本のホラー作品として楽しめました。

とにかく怖がらせてくる

 1952年ルーマニア。山奥の古い修道院で謎のシスター自殺事件が発生。調査員として、神父さんと共に一人の見習いシスターがなぜが選ばれます。修道院が、かなり山奥にあるということで、地元のガイド青年をひとり雇い、3人は事件のあった修道院に向かいます。

この作品のいさぎよさは、とにかく娯楽映画としてのホラーに特化している点。序盤こそ、修道院に向かって田舎町を進む旅が叙情的に描かれます。ですが、修道院に到着してからはもうドラマ展開はほとんどなし!。本家の『エンフィールド事件』が、物語や映画としての深みも持っていたのと比べると、最初からそういう「立派な映画」を作ることを目標にしていません。3人の訪問者に対し、不気味な悪魔シスターが、手を変え品を変え、執拗に恐怖攻撃(怖がらせ)をしかけてきます。もはやそれだけに徹底しており、「登場人物がひとりになったら10秒で怖がらせ」「イヤな暗闇があったらすぐ怖がらせ」「怪しい人物がいたら即怖がらせ」、後ろから横から、時にフェイントをからめ、様々な手段で観客を怖がらせてくれます。エンタメとして単純に怖い映画が見てみたい人にオススメです。

死霊館のシスター』ScreenX効果

ScreenXは、東京ならユナイテッド・シネマ アクアシティお台場など、ごく一部の劇場でのみ導入された新しいスクリーン方式。通常の正面スクリーンだけでなく、スクリーン左右の壁もスクリーンになっており、ここぞという場面で視界が左右に広がる画期的な上映方式です。

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今作はおそらく、日本でのScreenX公開作品としては『新感染ファイナル・エクスプレス』に続く2本目のホラー映画。ScreenXは、常に3面スクリーンで上映されるのではなく、作品が盛り上がるシーンでバーンと視界が広がります。修道院に到着して以降、怖がらせの乱れ打ちが続く今作では、やはりここぞという大仕掛けの怖がらせシーンにおいて「どうじゃ~!」とばかりに3面スクリーンになります。ホラー映画ファンとしては、このScreenX効果でホラー映画としての怖さがどうなるかに関心がありました。

体験してみてわかったのは、今作のScreenXでは、恐怖表現を増幅するというよりも、恐怖体験をした登場人物たちの混乱(めまいを感じるような気持ち)を増幅しているという感じ。というのも、通常上映を行っている以上、恐怖演出のメインは正面スクリーンに集約されています。不気味な墓地や修道院のヤバい通路などに自分がいるような臨場感は確かに広がりますが、怖さを強調するというよりも、万華鏡をのぞいているようなめまい感が強調されました。なかなか未体験な感じではありましたが、気持ちが3面に分散する分、恐怖も分散してしまう感じもありました。上映作品の性質にもよると思いますが、今作で純粋に恐怖を堪能するには、IMAXや通常上映の方が向いているかもしれません。

死霊館のシスター』のパンフレット

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カラーページとモノクロページが見開き毎に交互に展開する24ページ。監督インタビュー3ページ。プロダクションノート3ページの他、サンディエゴコミコンのレポート、『死霊館』ユニバースの解説、悪魔学作家 草野巧さんによる解説、「もし絶叫上映を行ったら?」をV8Jの方に妄想してもらう記事など、なかなかバリエーションに富んだ内容。シスター役の俳優さんが本家『死霊館』主演俳優さんの実の妹だったのはパンフ読まなければ分かりませんでした。

映画『死霊館のシスター』公式サイト

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映画感想 北村龍平監督『ダウンレンジ』ジャンル映画の面白さに徹した良作スリラー

2017年 日本 監督:北村龍平 (新宿武蔵野館)

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実写版『CASSHERN(2004)』と、(2018/10/20訂正。実写版CASSHERN紀里谷和明監督作品でした。基本的な間違いで申し訳ありません!)実写版『ルパン三世(2014)』の監督ということで、作品を観ていない人からも半笑いみたいな扱いを受けがちな北村龍平監督。ですが、『ゴジラ FINAL WARS(2004)』は、平成ゴジラの最終作ながら、昭和ゴジラの面白さを昇華させた名作でした。そもそも、十数作ある監督作品のうち、『ゴジラ FINAL WARS』以外も観たことある人がどれだけいるのでしょうか?。私はゴジラしか観たことがありません!

これが、ジャンル映画だ!

誰もいないアメリカの山中の道を走る車。若者たちがのんびり旅行中。急に車がパンクし立ち往生。パンクを修理していたら、ひとりの若者の頭が突然破裂! この場所は、姿を見せぬスナイパーに狙われている!! とりあえず車の裏に隠れた若者たちは生き残れるのか…

プロットはいわゆる「田舎ホラー」ど真ん中。アメリカの人里離れた荒野で、若者たちが恐ろしいものに襲撃されます。荒野の山中で車が立ち往生し、姿の見えぬ何者かに狙われているという状況は、以前感想を書いた『サランドラ(1977)』と同じです。※参考:映画感想『サランドラ(77)』ぼくのジョギリ・ショック - 映画とかのおはなしブログ

サランドラの方は、襲ってくるのが知恵遅れの山賊ファミリーだったので、恐怖映画ではなくなってしまい、まるでギャグのようなカルト映画になっていましたが、こちらはギャグ路線には行かず、シリアスなスリラーとして展開していきます。

正体不明のスナイパーは、遠くの森の中に隠れどこにいるのか分かりません。車は何もない道路のど真ん中で立ち往生してしまい、物陰からから少しでもはみ出すと即座に打ち殺されるという絶体絶命の状況。この限定されたワンシチュエーションで、なんとか脱出しようともがく若者たちが描かれます。

この若者たちのキャラ設定や立ち振る舞いが良い。肩を撃たれた痛みで混乱し、異常にうるさくわめきちらす男。怖さにすくんでしまい、いざという時に行動できず足手まといになってしまう女。など、まさにホラー/スリラーのジャンル映画にいそうな奴ら。若者たちは、なんとか自分の身の周りのものや環境を利用して活路を見出そうとするのですが、時に愚かな行動をとってしまい、いい具合にもどかしい展開となります。

ゴア描写はかなりの本気。飛び散る肉片!あふれ出る流血! 最初に被害に合う若者からいきなり恐ろしい撃たれ方をします。このように、スプラッタースリラーというジャンル映画の面白さを、エンタメとして徹頭徹尾追求している姿勢が素晴らしいです。

物陰から少しでも出たら死ぬ、いつ撃ち殺されるか分からない状況はずっと続き、登場人物たちの緊迫感が自分にもシンクロします。上映時間はジャンル映画としてベストの89分ですが、終始緊張をともなうので、体感時間はもっと長く、2時間以上に感じました。

日本人監督が海外で外国人俳優により撮影したというだけで珍しいですが、邦画なのに実質洋画のジャンル映画であるという例はほとんど無いのではないでしょうか? 田舎ホラーやスリラーのジャンル映画が好きな方はぜひ観てください!

ダウンレンジ』のパンフレット

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フルカラー24ページ。表紙側が文字抜きのポスターイラスト。裏表紙にタイトルという珍しいつくり。海外のパンフレットを意識したのでしょうか。インディペンデント体制の映画ということで、この作品企画に至った経緯と背景が、プロダクションノートと監督と脚本家の対談で詳細に語られており、興味深い内容でした。ポスターの複数のデザイン案が掲載されており、どれも魅力的です。

www.youtube.com

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映画感想『ザ・スクエア 思いやりの聖域』しつこく長いのに妙に面白い

2017年  スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク合作 監督:リューベン・オストルンド (新宿武蔵野館)

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非常に見ごたえのある凄い映画

正直、一度観ただけでは咀嚼しきれていません。というのも、この作品「非常に映画的で見ごたえのあるショット」「思わず笑ってしまうような出来の良いブラックコメディ」と、それでけで最上質の映画です。各シーンを眺めているだけで面白い。ですがさらに、そこにとどまらず、芸術とは、表現とは何か?を問いかけ、人間の道徳・倫理観など、様々なことについて問いかけてくる内容となっています。劇中には、同じ問いかけ機能を持つ現代芸術が登場しますが、この映画そのものが、参加した観客に様々なことを問いかける現代芸術として成り立っている、という多重構造があるのです。

現代美術を扱う美術館のキュレーターをしている男クリスティアン。彼は、新しい展示物「ザ・スクエア」を企画中。「ザ・スクエア」とは、床に作られた4メートルの正方形スペース。そこは「思いやりの聖域」と呼ばれる。その中にいる人が困っていたら、あなたは手を差し伸べなければいけない。という、観客の倫理観に問いかける参加型のアートです。

ある日、クリスティアンは町中で困っていた人に手を差し伸べようとして逆に特殊なスリ被害に遭い、携帯やサイフをスられてしまいます。その事件をきっかけに、一口では説明できないやっかいで迷惑な可笑しい出来事が、芋づる式に巻き起こってしまうのです。

本当にしつこい人々

この作品には本当にしつこい人間がたびたび登場します。たとえば、クリスティアンがスられたものを取り戻そうとする行動により迷惑をこうむった少年。彼は完全に被害者ではありますが、ストーカーばりに押しかけ、正論で謝罪をひたすら要求し続けます。たとえばクリスティアンと寝ることになる女性。ベッドでの事後、急に始まるまさかの攻防には爆笑。さらに後日、美術館に押しかけてクリスティアンの倫理観を具体的に問い詰め続けます。少年も女性も、狂気じみた勢いで彼に迫ります。迫られる本人には迷惑な話ですが、見物している観客側には喜劇です。終盤、謎の筋肉男の登場による、劇中最もしつこいシーンでは、あまりのしつこさにより、見ているうちに驚きが笑いに、笑いが恐怖に転換するという、感情の稀有な揺れ動きを体験しました。

映画のタイトルを「ザ・スクエア しつこさのお手本」にしてもいいんじゃないかな?と思える程、しつこいシーンが随所に存在することもあってか、上映時間の151分は長く感じます。しかし、普通なら「長く感じる=つまらない」になりそうなところが、この作品はそうではありません。ほとんど全てのシーンに映画的な見所があり、物語もどこに転がるか全くわからないため、「長くてしつこいと感じるのにずっと面白い」という、かなり珍しい映画体験となりました。

ザ・スクエア 思いやりの聖域』のパンフレット

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 24ページフルカラー。様々な問いを投げかける作品ということで、作品解釈の補助となる記事がメイン。監督自身による作品解説とインタビューで6ページを費やしています。さらに、古市憲寿(社会学者)、立田敦子(映画ジャーナリスト)、飯田高誉(インディペンデントキュレーター)と3人のレビューを各2ページ掲載。正方形のデザインで、この映画そのものが「ザ・スクエア」という現代芸術であるということを現しています。

www.transformer.co.jp

 

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映画感想『ザ・プレデター』職人芸光るハイテンポなスナックムービー

2018年 アメリカ 監督:シェーン・ブラック (新宿ピカデリー 字幕2D)

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昨年から、『エイリアン:コヴェナント』『T2 トレインスポッティング』『ブレードランナー2049』『ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル』など、過去の名作映画の続編が、以前にも増して増えてきた気がします。(『スターウォーズ』のシリーズ化復活が商業的に成功したからでしょうか?) しかも、どの作品も結構面白い。昔のような「続編に名作無し」のような状況ではすでにありません。『ザ・プレデター』も、その流れをくむ、『プレデター』シリーズの正当な続編です。

いきなりプレデター視点でスタート

映画はいきなり宇宙からスタート! プレデターのものと思われる宇宙船が別の宇宙船から逃げています。ワープ先はもちろん地球。宇宙船は地球に落下していきます。

この『ザ・プレデター』がいさぎよいのは、シリーズのお決まりや既に観客が分かっている部分をいちいち隠したりしない点。少なくとも『プレデター』1、2の事件を政府や軍の上層部は把握しており、新たなプレデターが来たことに対してのうろたえはありません。今までのシリーズを観ている観客もプレデターのことは知っているわけで、「謎のモンスター」のように無駄に引っ張ったりはしません。これにより、今までと重複するような説明シーンを省き、いきなり物語が動き出します。イマイチな続編の場合、観客が既に知っている謎だけで1時間くらい引っ張ったりするかもしれませんが、この作品にはそれは無し。偶然プレデターのことを知ってしまった歴戦の軍人と、その口封じをしようとする軍。そしてプレデターの、大きく分けて3勢力で物語が進みます。

省略のテンポ感がお見事!

判断力や物分かりのいい人物が多く、ダラダラとしないのもこの作品の魅力です。主人公と行動を共にすることになる、心に傷を負って精神病院送りにされそうだった軍人たちの一団。彼らも、宇宙人を見たという主人公の主張を、出会った直後はバカにしますが、プレデターの姿を一瞬見てからはグダグダ言わずにその存在を認めます。敵味方の立場の切り替えも瞬時。さっきまで戦っていた相手と共闘できるとなると、すぐに共闘します。物語が停滞する場面は無く、どんどん先に進んでいきます。

場面場面をつなぐ、進行の省略もお見事。プレデターが自分の息子を狙っているということに気づいた主人公。普通ならそこから、プレデターより早く自宅に戻れるのか?というタイムリミットサスペンスが20分くらいありそうなものです。しかし、この作品は違う。移動シーンも何もかも省略。気づいたシーンの次のカットで、いきなり、かなり距離の離れていそうな自宅に既に辿り着いており、息子はどこに行ったんだ?と探し始めるのです。舞台が変わる瞬間の省略は全体的に凄いのですが、さすがにここのシーンの省略は驚きました。

基本的にプレデターとの戦いは殺し合いになりますし、軍は秘密を知ってしまった主人公たちの抹殺も辞さない姿勢なので人間同士も殺し合いの状況。モブ兵士などは一瞬でガンガン殺されスプラッタな絵面になります。しかし、陰惨な印象は残りません。主人公と行動を共にする、心に傷を負った軍人たちはリラックスした愉快な奴らで、常におもしろい軽口をたたきます。それにより、無駄のない無駄なユーモアが全編ただよい、いい塩梅の痛快娯楽作品となっています。地球人の存亡をかけたスケールの大きい話のなのに、なぜかご町内の事件かのようなまとまり感があるのもポイント。今年観た映画の中で、エンタメ感の感触が一番似ているのは、ジャンルは全く違いますが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』part1です!

戦闘宇宙人と軍人が戦うだけの純粋エンタメ映画ですが、おすすめです!

ザ・プレデター』のパンフレット

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フルカラー36ページ。キャストインタビュー、プロダクションノート、監督インタビューで10ページあり制作エピソードが充実。過去5作の解説もそれぞれ1ページあり。写真も充実しています。

 

www.foxmovies-jp.com

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