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映画感想『クレイジー・フォー・マウンテン』神秘体験に近づく瞑想トリップ映画

2017年 オーストラリア 監督:ジェニファー・ピードン (新宿武蔵野館で観賞)

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クレイジーというかマウンテン

原題は「Mountain」。邦題にクレイジーが追加されているのは、明らかに人気バラエティ番組『クレイジージャーニー』の影響です。確かに、この作品では、『クレイジージャーニー』でも取り扱っている、死と隣り合わせの登山やエクストリームスポーツも取り扱っています。たしかに、邦題を映画『山』! などにされるよりも、内容を想像しやすい邦題です。

しかし、この作品は、『クレイジージャーニー』のように、ひとりひとりの冒険家や挑戦者とその偉業にスポットを当てたようなドキュメンタリーではありません。扱っているテーマは「人と山との(一方的な)関係」です。

最初は普通のドキュメンタリーだったはずが

冒頭、何の説明もなく挿入される「命綱なしで数百メートルの絶壁を登る男」だけで、心が持っていかれそうになります。『バキ』でいうところのリアルシコルスキー、もしくはリアル「アイカツ!アイカツ!」です。

f:id:tenguotoko:20180726154640j:plain板垣恵介先生『バキ』シコルスキーさん

f:id:tenguotoko:20180726154948j:plainアニメ『アイカツ!星宮いちごさん

 ですが、序盤は誠実な普通のドキュメンタリーです。圧倒的に巨大な山脈に対し、人類は宗教的に「崇拝」していました。それが、人口の増加と科学技術の発展にともない、次第に「探検」「開拓」の対象になっていき、地図や登山ルートが徐々に作られていきます。地図が完成し、ルートが共有され、登山に使える道具や知識が発展していくにつれ、未登頂の山に挑戦するという「冒険」の対象となっていきます。その「崇拝」から「冒険」への移り変わりを、丁寧に解説してくれます。

後半のエクストリームコンボにめまい

 その「冒険」も、次第に普遍的なものになっていきます。世界最高峰のエベレストですら車道が整備され、世界中からツアー観光客の行列が順番待ち。もはや「冒険」も「観光」になってしまいます。ただ登るだけでは当たり前になってしまった現代で、刺激を求め続けた人々が辿り着いた要求は何か?。それが死の危険と隣り合わせの「エクストリームスポーツ」です。

氷の天井を命綱とピッケルだけで進む!命綱なして崖をよじ登る!ヘリコプターで山頂に行き自転車で駆け落ちる!わざと雪崩を起こし、そこにスノーボードで乗る!ムササビスーツで崖から飛び降りる!そういった、いつ死んでもおかしくないエクストリーム映像が、『クレイジージャーニー』放送20回分を同時に観るくらいの密度で怒涛のフラッシュバック!。全編流れている雄大クラシック音楽とのシンクロもあいまって、挑戦者たちの脳と自分の頭が同調をはじめ、時間の感覚が無くなっていき、脳内麻薬が出まくります!。自分は登山経験はほぼありませんが、もしかして、これが「山に魅せられた人々」の心境なのでしょうか!?

これに近い感覚/心境は、アクション映画の奇作『X-ミッション(2015年 アメリカ 監督:エリクソン・コア)』での数回のエクストリーム・ミッションシーンでも垣間見れました。しかし、あくまでも数回の見せ場シーンだけでした。こちらの『クレイジー・フォー・マウンテン』には、それしかありません!

映画『X-ミッション』公式サイト 2016年2月20日(土) 新宿ピカデリー、丸ノ内ピカデリー他 全国ロードショー<2D/3D上映>

まさにこの瞑想トリップのような「体験」が、映画『クレイジー・フォー・マウンテン』の醍醐味です。スクリーンでなければ味わえない映画体験。ぜひ、映画館で観てください!

『クレイジー・フォー・マウンテン』のパンフレット

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20ページフルカラー。監督と脚本家のしっかりしたインタビュー掲載。音楽へのこだわりも語られています。登場する17の主な山の紹介。服部文祥さん(登山家・作家)と、後藤陽一さん(フリーライドスポーツの主催者)によるコラムも掲載。単館系上映作品とは思えぬしっかりしたパンフレットです。

映画『クレイジー・フォー・マウンテン』公式HP|7/21(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

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