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映画感想 白石晃士監督の新作短編『恋のクレイジーロード』と同時上映作品

2018年 日本 監督:白石晃士 (アップリンク渋谷)

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新作『恋のクレイジーロード』をメインに複数の作品を同時上映するプログラム。

『超エドガーケイシー』(14分)『恋のクレイジーロード』本編(18分)『メイキング・オブ・クレイジーロード』(29分)の3作が固定。

4作目はいくつかのレア作品を日替わり上映。今回は未見だった『暴力人間(97)』に合わせて行きました。

エドガーケイシー

14分の短編フェイクドキュメンタリー。白石監督と二人の俳優さんが、俳優の金子鈴幸さん(金子修介監督のご子息とのこと!)の誕生会を開く。その中で、金子さんが突然妙な告白をはじめる・・・

舞台はダイニングルームのみ。白石監督の撮影するただのホームビデオのはずだったのが、数分のうちに信じられないスケールの話に展開していきます。

これは、白石監督が著書『フェイクドキュメンタリーの教科書(2016,誠文堂新光社)』付属DVD収録の短編作品『白石晃士の世界征服宣言』で披露したのと同じく、カメラひとつとアイデアと編集だけで面白いスペクタル映画が撮れるんだぞ!という意志を感じる作品。しかも今回はコメディです。上映時間は短いですが、これ1本目当てで観に行っても申し分ない面白い作品。今までの白石監督作品が好きな方は、短い中で得意技が濃縮されており、楽しめます!

恋のクレイジーロード

 今回のメイン作品となる新作短編。どこかの田舎道。バスに乗ってどこかへ向かっているカップルらしき男女。ふたりとも、どことなくやさぐれて病んでいる様子。窓からの景色もどことなく荒んで見えます。すると、同じバスに乗っていたヤンキーが因縁をつけてきます。このヤンキーがまた白石監督お得意の悪い奴。現実にいたら絶対関わりたくないイヤさ。しかし、そんなヤンキーなど問題にならない、本当にヤバイキチガイがバスに乗り込んできた!

「クレイジーロード」というとちょっとカッコイイですが、乗客も少ないバスの中で狂気(クレイジー)がどんどんインフレしていく展開は濃密!。上映時間は18分とのことですが、興奮で30分くらいに感じました。冒頭、主役カップルの女がバスの外に目撃してしまう「本当にヤバい何か」のショットはホラーとしても最高!

メイキング・オブ・クレイジーロード

『恋のクレイジーロード』のメイキング作品。フェイクではない純粋なドキュメンタリーで、白石監督ではなく別の方(たしか助監督? 訂正、別の方でした)の監督作品です。ニコニコチャンネル「白石晃士と坪井篤史の映画狂人ロード」の雑談で白石監督が俳優田中俊介さんに注目。その個性を発揮させるための企画が実現したという経緯。撮影の一部始終が丁寧に描かれます。撮影期間一日という限られた時間、路線バスの中というワンシチュエーションで試行錯誤する撮影風景は緊張感も伝わってきます。白石作品では常連の宇野祥平さんの素の姿も見所。通常、映画館の上映で本編とメイキングを連続で観ることはないので、珍しい映画体験になりました。

暴力人間

 1997年 日本 監督:白石晃士、笠井暁大

ひろしま映像展98で企画脚本賞・撮影賞を受賞した初期の自主映画長編。大学の映画サークルに所属し、何か凄い映画を撮りたい白石君。超体育会系で上級生・OBから地獄のイジメが行われるのが恒例だった新入生歓迎会で大暴れして退部になったという伝説のワルふたり。その密着取材ドキュメンタリー映画を撮ろうと、ふたりにインタビューを試みます。しかし、そのふたりのワルさは常軌を逸していた!

最初、学生がビデオをただ回してるだけだったのが、その辺の不良モノ顔負けの、信じられぬ「いともたやすく行われるえげつない行為」がカメラの前で巻き起こっていきます!

プロデビュー前の作品ですが、登場人物の手持ちカメラ視点だけのPOVフェイクドキュメンタリーであり、それを活かしたリアリティ、悪い奴の信じられないくらい悪いえげつなさや、何が何でもカメラを離さず映画を完成させようとする白石君の狂気など、その後の白石監督作品の持つ個性が既にあるバイオレンス映画でした。

『恋のクレイジーロード』のパンフレット

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フルカラー18P。主演芦那すみれ✖宇野祥平✖白石監督の対談と、主演田中俊介✖今作でプロデューサーを務めた名古屋の映画館「シネマスコーレ」副支配人 坪井篤史の対談の二つの対談がメイン。作品の企画書も掲載。通常、この公開規模の短編作品ではパンフレットは作られないのでありがたいです。

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