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【映画感想】『万引き家族』は実質アベンジャーズ

(2018年 日本 監督:是枝裕和)  TOHOシネマズ日比谷で観賞

映画大量観賞クラスタの皆さんは既に観賞済みと思います。ので、「映画はわりと観るけど、いまいち食指が動かん」方に向けたススメです。

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 この作品は現代日本の貧困などを描いた社会派映画であるということは自明であり、既にプロアマ問わず非常に多くの方が評論・感想を述べられています。TBSラジオクラウドをつまみ聴きしているだけでも、「たまむすび」で町山智浩さん、「荒川強啓デイ・キャッチ!」で宮台真司さん、「荻上チキSession-22」で荻上チキさん、「アフター6ジャンクション」でライムスター宇多丸さんと、映画評論をする番組では軒並み特集。新聞・雑誌各誌やSNS上の真面目な評論・感想も、いくらでもあるはずなので、そういうことは書きません。

 今回書きたいことはこれです。映画『万引き家族』は二つの意味で実質アベンジャーズなのだ!(え?)

社会問題のアベンジャーズ

この映画、単なる「社会派映画」ではありません。言うなれば「1つの問題だけで映画1作できそうな社会問題が勢ぞろいしたアベンジャーズ」、「エクストリーム社会派映画」です。エクストリーム映画ですので、私の好きなエクストリーム格闘漫画『グラップラー刃牙』風に表現しましょう。(なぜ?)

全選手入場!!

総合万引き技は すでに我々が完成している!!
日雇い肉体労働の事故で労災はおりず!!  夫・治だァ――――!!!

 

DVの元夫は殺して埋めてナンボのモン!!! 職場での超実戦横領!!
妻・信代の登場だ!!!

 

真の万引きを知らしめたい!! 最初に拾われた孤児!! 祥太だァ!!!

 

穏やかな強請りなら 我々の歴史がものを言う!!
血縁者無し! 独居老人 初枝!!!

 

指名されしだいハグしまくってやる!!
親に外国留学と偽りソフト風俗勤務のフリーター(?) 亜紀だァッ!!!

 

行栄不明の女児(5歳)は生きていた!! 疑似家族で絆を結んだ虐待少女は甦るのか!!?
じゅり!! またの名は りん だァ――――!!!

 

加えてこの万引き一家以外にも  超豪華なリザーバーを3名御用意致しました!


社会の居場所はもはやソフト風俗通いだけ!  池松壮亮なのに役名は4番さん!!

 

特に理由はないッ 児童虐待が悪いのは当たりまえ!!
マスコミにはないしょだ!!! 5歳児にアイロンを押し当てる!
じゅりの両親がきてくれた―――!!!

 このエントリーはぶっちゃけこれがやりたかっただけです(←!?)。ですが、以上のように、社会問題のるつぼと化した全員赤の他人同士が、様々な思惑を抱えつつ、一つ屋根の下で疑似家族として暮らす。そして外部とも対峙せざるを得なくなる、「社会派映画のアベンジャーズ」なのです。「貧困問題」のようなひとつの問題ではなく、数えきれない様々な社会問題がこの映画には含まれています。すぐ解決できる問題なら社会問題にはならないわけで、この作品の中でも「正解」は提示されません。観た人それぞれが受け取り、考えていかなければならないという内容になっています。

 邦画俳優アベンジャーズ

是枝監督の過去作『海街diary(15)』は、観た人は分かりますが、実は既に実質アベンジャーズでした。『海街diary』は、漫画原作映画ながら軽薄な娯楽映画ではなく、地に足がついた古き良き日本映画の現代版のような作品。しかし、主役4人に目を向けると、長女- 綾瀬はるか。次女- 長澤まさみ。三女- 夏帆。異母妹- 広瀬すず。と、一人で大衆娯楽映画のヒロインや主役を何作もやっている女優さんばかり!。『海街diary』は、ある意味スーパーヒロイン大集合映画だったのです。

今回の『万引き家族』も、その延長線上にあるアベンジャーズ映画なんです。「カンヌ国際映画祭パルムドール受賞」「社会派」という面にばかり意識が向きがちですが、出演俳優さんを冷静に見ていくだけで分かります。

夫・治 役 リリ・フランキーさん
…2016年以降の出演作だけでも「SCOOP!」「聖の青春」「美しい星」「サニー/32」など、出演作20本以上!現状最も売れている俳優の一人。

妻・信代 役 安藤サクラさん
…演技派として確固たる位置にいる女優さん。『SR サイタマノラッパー2』が好きです。2016年以降は『追憶』『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』『DESTINY 鎌倉ものがたり』など。

初枝 役 樹木希林さん
…50年以上のキャリアが膨大すぎて、その凄さが認識しきれない。大林宜彦監督『転校生(82)』『さびしんぼう(85)』の時点でベテラン俳優ですよ!。作品の振り幅も『REX 恐竜物語(93)』から『人生フルーツ(17)』のナレーションまでと広過ぎ。現在公開中の『モリのいる場所(18)』も良いらしいですね。

亜紀 役 松岡茉優さん
…みんな大好き『ちはやふる』のクイーン。そして『勝手にふるえてろ』の良香です。ありがとうございます。

残り二人の子役は新人。是枝監督流の子役演出で凄い演技を見せてくれます。

この家族と対峙する人々もスターです。

万引き被害にあう駄菓子屋役は『シン・ゴジラ(16)』で「総理…苦しい決断ですが…」と何度も助言していた内閣官房長官役が印象的だった柄本明さん。今作でも、主人公に対して助言するシーンがあります。

世間の意見代表として家族を追及する二人の刑事役は、男性刑事は善意の象徴『横道世之介(13)』の世之介役や『シン・ゴジラ』で内閣官房副長官秘書官 志村役だった高良健吾さん。女性刑事は『ジョゼと虎と魚たち(03)』で足が不自由なジョゼ役という、当時としては世間の良識に問いかけるような作品で主演をつとめた池脇千鶴さんです。

上の全選手入場でも触れましたが、ソフト風俗の名もなき常連客という超脇役を『セトウツミ』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』 主演の池松壮亮さんが演じているという豪華さ。さらに、夫の肉体労働現場のガラ悪い同僚は『ケンとカズ(16)』のこっわーいカズ役で注目され『全員死刑(17)』の悪い悪い兄役も印象深かった毎熊克哉さん。「セレクトのさじ加減が絶妙な邦画アベンジャーズ/スパロボ感」。少しでも伝わりましたでしょうか?。興味を持った方はぜひ観てください。

万引き家族』のパンフレット

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48Pという大ボリューム。主要インタビューはもちろん、思想家 内田樹さん、外国映画に関する多数の著作を持つ中条省平さん、ドラマ『カルテット』の脚本家 坂本裕二さんのコラムも掲載。かなり読みごたえのあるパンフレットです。そしてなんといっても、家族の記念写真が貼り付けてあるデザインの表紙がグッズとしても素晴らしいです! 

 

是枝裕和監督 最新作『万引き家族』公式サイト