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映画感想『処刑軍団ザップ(1970)』処刑軍団ザップが出てこない件

1970年  アメリカ 監督:デヴィッド・E・ダーストン

新宿シネマカリテの特集上映「カリコレ2018」で観賞。

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冒頭から問答無用の処刑軍団ザップが登場!しない

ダムの開発により住民が流出。人口40人くらいの過疎集落に事実上なってしまったアメリカの山奥の町。そこを通りかかったのは、荒野の7人ならぬ、ヒッピー8人。

奴らはなんちゃってサタニストで、LSDを常用。雑なサタンの儀式を山の中で全裸で行い、通りかかった女性には襲い掛かるという、ウェイ系が究極進化した、いかれた奴らです。そいつらの車がこの町で壊れ、滞在することに。さっそく空きホテルに入り込み、暴れまわる。大量繁殖していたネズミをつかまえて焼肉パーティーとしけこむ異常さ。

一方、町の住人サイドでは、町の娘が誰かに襲われたと騒ぎに。娘のおじいさんが、ガキどもに一言ガツンと言ってやる!と乗り込みますが、一撃で返り討ち。LSD漬けにされて命からがら逃げ帰ります。

あいつらにおじいちゃんの仕返しをしてやる!と意気込む少年は、狂犬病の犬から採取した体液を、ヒッピーたちの朝食に混ぜ込み、ぶっ殺そうと企てます。

このように、この映画の前半は、過疎化した街にやってきたサイテーな若者8人と、それに気づいた一家の、緊張感あるやり取りが描かれます。

タイトルにある、処刑軍団ザップは出てきません。

後半は斬新なパンデミックもの

少年の復讐が成功。狂犬病にかかり苦しむヒッピー達。しかし、LSD常用者だったからか、もともと凶悪だったのがさらに狂人化。ナイフや斧などの狂気を手にし、人に襲いかかる狂った殺人鬼となります。この狂犬病は感染力が非常に強く、ダムの作業員らにも次々と感染。後半は、いわゆるゾンビ映画に限りなく近くなります。

しかし、この作品の魅力は、感染者がゾンビではない点。狂犬病または恐水病とされる病気に重度に感染。感染者は理性を失い狂暴化。生肉と血を求め人を殺しますが、水を異様に怖がるようになります。動く死体ではないので、そのビジュアルは、口から泡を吹いて「ウウェ~」とうめき声をあげる頭がおかしな人。そして、水を怖がるという設定により、感染者に襲われて絶体絶命!というシーンでは、川に逃げ込んだり、ホースで水をかけてピンチから脱出します。人が狂う重度の病気という設定は意外にも、死体が動くゾンビ映画よりもリアリティがあります。ですが、その絵面は「水をかけられていやがるキチガイ」でしかありません。なんとも言えないヘンさが込み上げてきます。

ただのB級映画というわけではない

ヒッピーたちの度を越した乱暴な狼藉ぶりと、感染者の狂人描写、そしてとんがった電子音のBGMにより爆笑シーンが多数ある本作ですが、単なるバカ映画なだけではありません。ヒッピーたちが町に訪れ、町が徐々にざわついていく様子。そして少年の仕返しがパンデミックに至るまでの過程が丁寧に描かれています。

この映画は、1970年という公開された時期と、基本は屋外が舞台なのに地下室に逃げるというシーンがわざわざあることからも、最初のゾンビ映画ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)』から直接の影響を受けていると思われます。狂犬病パンデミックも、動く死体をもっとリアリティ重視にしようとした工夫にも感じます。田舎ホラーと、スプラッターホラーと、ゾンビ映画と、シュールでヘンな映画の魅力を兼ね備えた、かなり面白い映画です!

タイトルにある、処刑軍団ザップは最後まで出てこないぞ。

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