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映画感想 阪元裕吾『ハングマンズ・ノット』暴力人間 対 サイコ殺人鬼のVS映画

2017年 日本 監督:阪元裕吾 (キネカ大森「夏のホラー秘宝祭り2018」で観賞)

面白いバイオレンス邦画がいっぱい公開され続ける嬉しい状況

2016年の邦画は暴力/犯罪映画の名作が同時多発的に続けざまに公開される素晴らしい状況でした。私的なリアルタイム映画鑑賞記録視点では、渋谷アップリンクでの見逃した映画特集『孤高の遠吠(監督:小林勇貴)』からスタート。それから、『ディストラクション・ベイビーズ』『ヒメアノ~ル』『クリーピー 偽りの隣人』『日本で一番悪い奴ら』『葛城事件』『ケンとカズ』『怒り』『無垢の祈り』『淵に立つ』と、インディーズから巨匠の大作まで、容赦ない暴力と黒い感情が渦巻く名作傑作が、毎月公開! 2017年になってからも『なりゆきな魂、』『愚行録』『全員死刑』『ビジランテ』など、その流れを継ぐ作品があり、新しいバイオンレンス/暴力犯罪映画が、邦画のいちジャンルとして確立した感があります。

2016年以前のこのジャンルの息吹を辿ると、白石晃司監督の『バチアタリ暴力人間(2010)』『超・悪人(2011)』といった、ありえないほど悪い奴を描いたバイオレンス作品群がひとつあり、もう一方では、空賊・富田克也監督の『国道20号線(2007)』『サウダーヂ(2011)』といった日本の郊外の貧困と半グレを描いた作品があり、それらの「あからさまな暴力」と「貧困などの日本の閉塞的状況」が混ざりあって、今の日本の新しいバイオレンス映画が生まれているような肌感覚があります。『ハングマンズ・ノット』もこの流れをくむ作品です。

こんどはVSだ!暴力人間 対 サイコ殺人鬼

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 ニコ生配信中のカップルの家に土足で乗り込んでくるDQNグループ。「自分が負け続けたパチンコ台でカップルの彼氏が勝っていたから」という無茶苦茶な理由で家宅侵入。暴行!恐喝!悪逆の限りをつくします。彼らは警察にもマークされている半グレ集団。タコ焼きから葬式のお坊さん(!)まで、欲しいものは全て恐喝・恫喝・拉致・殺人で手に入れる最低の奴らです。

一方で描かれる、電車の中でひとりでブツブツ喋っている根暗そうな男。一見、ただのコミュ症オタク風青年ですが、大学内で見かけただけの片思いの女の子のことを、自分と付き合っている彼女だと脳内変換。話したこともない女の子の家に侵入し、サプライズで誕生日パーティの準備をしてしまう、最低に気の狂ったストーカー殺人鬼でした。

 今の京都という、映画的に珍しい舞台の中で、DQNグループの途方もない胸糞悪い犯罪と、サイコ殺人鬼の話の通じないヤバさが交互に描かれていきます。DQNグループは白石晃司監督『暴力人間』的な存在。サイコ殺人鬼はホラー映画/サスペンスドラマ的な存在。それぞれ別種の「悪」ですが、両者共に自分のことしか考えておらず、あまりに利己的すぎるため、逆に笑えてしまいます。ここまで悪いとかヤバいとしか書いていませんが、この作品は爆笑コメディです。謎の存在感持つ犯罪請負人「後醍醐親子」がテロップつきで急に登場した時などは、あきらかに怖さよりオモシロの感情が上回りました。

そして、絶対に他者と相容れないこの二組が出会った時、どうなってしまうのだろうか?。それを期待してしまいます。怪獣映画や『貞子VS伽椰子』ではありませんが、強大な悪と悪がぶつかり合うのを傍観したいVS映画としての魅力もあるのです。今の日本のバイオレンス映画好きの方にオススメです!

 

『ハングマンズノット』 - ゆうばり叛逆映画祭2018 / Yubari Hangyaku Film Festival 2018

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