映画とかのおはなしブログ

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映画感想 北村龍平監督『ダウンレンジ』ジャンル映画の面白さに徹した良作スリラー

2017年 日本 監督:北村龍平 (新宿武蔵野館)

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実写版『CASSHERN(2004)』と、(2018/10/20訂正。実写版CASSHERN紀里谷和明監督作品でした。基本的な間違いで申し訳ありません!)実写版『ルパン三世(2014)』の監督ということで、作品を観ていない人からも半笑いみたいな扱いを受けがちな北村龍平監督。ですが、『ゴジラ FINAL WARS(2004)』は、平成ゴジラの最終作ながら、昭和ゴジラの面白さを昇華させた名作でした。そもそも、十数作ある監督作品のうち、『ゴジラ FINAL WARS』以外も観たことある人がどれだけいるのでしょうか?。私はゴジラしか観たことがありません!

これが、ジャンル映画だ!

誰もいないアメリカの山中の道を走る車。若者たちがのんびり旅行中。急に車がパンクし立ち往生。パンクを修理していたら、ひとりの若者の頭が突然破裂! この場所は、姿を見せぬスナイパーに狙われている!! とりあえず車の裏に隠れた若者たちは生き残れるのか…

プロットはいわゆる「田舎ホラー」ど真ん中。アメリカの人里離れた荒野で、若者たちが恐ろしいものに襲撃されます。荒野の山中で車が立ち往生し、姿の見えぬ何者かに狙われているという状況は、以前感想を書いた『サランドラ(1977)』と同じです。※参考:映画感想『サランドラ(77)』ぼくのジョギリ・ショック - 映画とかのおはなしブログ

サランドラの方は、襲ってくるのが知恵遅れの山賊ファミリーだったので、恐怖映画ではなくなってしまい、まるでギャグのようなカルト映画になっていましたが、こちらはギャグ路線には行かず、シリアスなスリラーとして展開していきます。

正体不明のスナイパーは、遠くの森の中に隠れどこにいるのか分かりません。車は何もない道路のど真ん中で立ち往生してしまい、物陰からから少しでもはみ出すと即座に打ち殺されるという絶体絶命の状況。この限定されたワンシチュエーションで、なんとか脱出しようともがく若者たちが描かれます。

この若者たちのキャラ設定や立ち振る舞いが良い。肩を撃たれた痛みで混乱し、異常にうるさくわめきちらす男。怖さにすくんでしまい、いざという時に行動できず足手まといになってしまう女。など、まさにホラー/スリラーのジャンル映画にいそうな奴ら。若者たちは、なんとか自分の身の周りのものや環境を利用して活路を見出そうとするのですが、時に愚かな行動をとってしまい、いい具合にもどかしい展開となります。

ゴア描写はかなりの本気。飛び散る肉片!あふれ出る流血! 最初に被害に合う若者からいきなり恐ろしい撃たれ方をします。このように、スプラッタースリラーというジャンル映画の面白さを、エンタメとして徹頭徹尾追求している姿勢が素晴らしいです。

物陰から少しでも出たら死ぬ、いつ撃ち殺されるか分からない状況はずっと続き、登場人物たちの緊迫感が自分にもシンクロします。上映時間はジャンル映画としてベストの89分ですが、終始緊張をともなうので、体感時間はもっと長く、2時間以上に感じました。

日本人監督が海外で外国人俳優により撮影したというだけで珍しいですが、邦画なのに実質洋画のジャンル映画であるという例はほとんど無いのではないでしょうか? 田舎ホラーやスリラーのジャンル映画が好きな方はぜひ観てください!

ダウンレンジ』のパンフレット

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フルカラー24ページ。表紙側が文字抜きのポスターイラスト。裏表紙にタイトルという珍しいつくり。海外のパンフレットを意識したのでしょうか。インディペンデント体制の映画ということで、この作品企画に至った経緯と背景が、プロダクションノートと監督と脚本家の対談で詳細に語られており、興味深い内容でした。ポスターの複数のデザイン案が掲載されており、どれも魅力的です。

www.youtube.com

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